日本人留学生いろいろ 其の一

ハルビンも冬真っ盛り、学期末も近づきつつある。

 冬は氷祭りやら、クリスマスやら、ワクワクするようなイベントが盛りだくさん。
零下のハルビンでは、街角で冷凍庫なしにアイスを売っている。外で果物やお菓子
と並んで色とりどりのアイスが売られているのは見るだけで楽しいし、寒い中を頬
張りながら歩くのも醍醐味の一つ。テスト勉強なんかさっさと片づけちゃって、冬
休みはどこへ行こうかな?暖気の効いた部屋で、旅行の計画をじっくり練るのも楽
しい。

 だけど、これで2回目の学期末、別れの季節でもある。

 先学期もそうだったけど、こっちで知り合って、一緒に旅行したり、グルメツアー
なんかを一緒にやって、親交が思いっきし深まってしまった友達の帰国というのは、
やっぱり寂しい。広大な中国に比べて、あんなに小さな日本、逢おうと思えばいつで
も逢えるのはわかってるけど。電話かければいつでもいた友人の部屋、来学期は知ら
ない留学生が住んでいる。馬鹿話や授業の話、ずっと共通の話題で盛り上がっていた
のに、急に住所やメールアドレスなんかを交換しあったりして、なーんか他人行儀な
気もするし、帰国したらみんなそれぞれ今とはまったく違う生活が待ってるのだ。
 
 実際のところ、私は日本人との交流があまり多くない。日本人留学生の数はわり
と多いから、知らない人もいるし、なにより人付き合いがよろしくないのだ。
 ハルビンには「ハルビン日本人会」という、留学生や駐在員など、こっちで生活し
ている日本人が時々集って、スポーツしたり、日本料理屋で飲んだりする交流会が
ある。
時々回覧板が回ってきて、参加不参加を聞かれたりするが、出た例しがない。
 新学期には「新来歓迎会」も催されるし、学期末には「老同送別会」も催されるが、
やれ旅行と重なるだの、胡弓のレッスンがあるだので、これもすっぽかしが多い。
日本人同士の交流は、きっと情報収集だとか、メリットが沢山あるはずなんだけど、
心のどっかで「日本人とツルむっつーのもなんだ」という気持ちが働いてしまう。

 こんなちょっと気取ったお馬鹿な私だが、まめにグルメツアーを提案してくれ
たり情報をくれたり、「旅行一緒に行かねーか」と誘ってくれる奇特な方々に恵ま
れ、狭いながらも深い友達づきあいをすることができている。

  というわけで、今日は奇特な心の持ち主である私の留学生仲間を紹介します。
っていうか、殆どが社会経験のある、私らが言うところの「脱サラ組」。変化に富
んでておもしろい。県から留学させてもらっている友達、K玉さんがいうには、「な
んで安定した生活を捨てて留学に踏み切ったのか、理解できない!」だそうだが、ま
ったくその通りであるな。っていうか私もその仲間の一人であるが。ま、自分のこ
とはさておき彼らには彼らの言い分があるから、聞いてちょうだい見てちょうだいな。

 例えば、先学期帰ってしまったF原さんは、元々は東京の人だったのだが、アイヌ
についての興味が深まって、ついに北海道へ移住してしまった。さらにはアイヌの人
で、同時にアイヌ研究の大家である旦那さんも、猛烈なラブラブ光線を駆使して射止
めたという。そのように好奇心旺盛、なおかつ行動力も盛んな彼女は、黒龍江省に多
い北方系少数民族に対する興味が高じて、また、日本を単一民族国家だと思ってる輩
に「少数民族はいるのだ!」とアピールするため、勤めていた博物館を辞め、ハルビ
ンへ留学。
 中国語については、大学時代第二外国語でかじっていたので、上達も早かった。
啓蒙活動の方も、持参してきた沢山の小冊子を配るなどしていたから、成功といえる。
 帰国後はもっぱら旦那さんの手伝いをして、中国語は殆ど忘れてしまったとのこと。
だが、もともと語学留学がメインではなかったから、彼女のハルビン行きはこれで良
かったのであろう。悔いるところなし、と本人も言っていた。

 K玉さんに言わせると、「高収入の旦那さんがいるから、仕事を辞めても問題な
い。彼女については認める。」だそうだ。「問題はやはりF川くんと、Yりちゃん
だ。」と続ける。そうか〜、彼らはダメなのか〜!!K玉さんは手厳しい。
どちらも脱サラ組で、出来れば擁護したいのだが。では、続けましょう。(つづく)

(2002年掲載分)
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