日本人留学生いろいろ 其の一

F川くんは、大学卒業後、医療関係の仕事に就いた。彼に語らせると何時間も続
くので手短に言うと、親父さんは海外でさまざまな救援活動をしている。学生時代
は、常に不在の父親にかなりの反感を抱いていたらしい。語学にはまったく興味は
なく、安定した職に就き、安定した家庭を築くことこそが彼の夢であった。
 が、この辺こそが語らせると長い部分なので省くが、ある日突然父親の偉大さに
気づいたという。そして、自分もいずれ海外協力隊員として働きたい、まずは語学
だ、留学するぞ!と、26歳にしてハルビンへ留学。今、本科生として勉強の毎日。
 なぜ英語圏や中国でも北京や上海を留学先に選ばなかったのかは黙して語らない
が、恐らく費用の関係であろう、と我々は睨んでいる。
 ワタシは、彼の志をかっているし、ぜひ実現させて欲しいと願って止まないのであ
るがいかんせん、中国語の進歩が遅い。努力しているのは見て分かるが、語学の伸
びには個人差があるのだ。ここでまた、K玉さんの厳しい声が響く。

 「もうすぐ2年になるのに、中国語がこれではね〜。」

 厳しい!厳しすぎる!しかしK玉さんはホントは優しい人なのだ。国立の一流大
学で中国語を専攻し、卒業後紆余曲折を経て、ようやく国の費用で2年の留学を勝
ち取った彼女は、経験から自分に厳しく、また他人にも厳しくなるのは当然のこと
と言える。
このような辛口発言をするのも、面倒見の良い彼女の、愛の鞭なのだ!

 愛の鞭は、Yりちゃんにも飛ぶゾ!!

 Yりちゃんも、自分に厳しく、他人にも厳しい。その辺K玉さんとよく似ている
が、何事においても、留学生でK玉さんに勝てる人は一人としていないのだ。
 それはさておき、彼女を紹介しましょう。

 大学卒業後、Yりちゃんは葬儀会社へ就職した。数年間働くことになるが、その間
に台湾人の男性を好きになった。これがきっかけとなり、中国語学習を開始。ところ
が、彼に振られてしまった。だが、転んでもタダでは起きないところが彼女のいい
ところ。
 「一度中国語を学び始めたからには、徹底的にやろう!」そう決めたのは27歳の
頃で、仕事を辞め、夏の短期留学で初めてハルビンへ来た。どうにも惚れやすいのが
彼女の特徴で、滞在中、再び恋をした。相手は彼女に補習授業をしていた中文科の生
徒。
 短期留学が終わっても彼を忘れることの出来なかったYりちゃんは、半年留学する
事を決意。ワタシと同じ日にハルビン入りを果たした。なんとか語学力を向上させ、
彼を射止めるのがYりちゃんの最大の目的であったが、短期留学中、同室で、同じく
彼の生徒であった韓国人の女の子が先に彼を射止めてしまった。またも、失恋。
 今回はかなり痛手を負ってしまったが、やはり彼女の特性を発揮、「ペラペラに
なって、相手を見返してやるぅ〜」と猛勉強を開始、留学期間も半年から1年半に
延長し、アッという間にHSKも8級を取得、「恋はもうゴメン」と、勉強相手の
中国人を全て女性にしたのは賢明な処置であったと思う。
 目下、彼女の夢は中国語を使ってバリバリ仕事をすることに変わり、半年後、帰
国したあかつきには、貿易関係の面接を受けまくるつもりだという。

 ワタシは彼女をねばり強く努力家の女性であると評価しているのだが、ヒステリッ
クな性格の持ち主で、たびたび人を困らせるのがYりちゃんの欠点。また、中国語
学習の要である四声がハッキリしないので、話すスピードはかなり速いが、言って
ることは半分しか相手に伝わらない、というワタシも身につまされる弱点もある。そ
こへK玉さんの鞭が飛ぶのだ。

 「性格的にちょっと問題あるし、再就職難しいんじゃない。中国語もなんだし」

 厳しい!厳しすぎる!が、ワタシは今思った。一番クセのある、アクの強い留学生
は、果たして誰であるか。K玉さん、キミに決定だヨ!彼女の語学力は確かに我が
校一番ではあるが、あら探し&辛口発言こそが、誰も勝てないゆえんであった。。

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