ハルビンの食事情 狗肉篇(2002年掲載)

 朝鮮族の多く住むハルビンには、本当に沢山の「犬」料理屋があります。

 まず先に、ハルビン朝鮮族がとても多い。ので、韓国人にとってはわりと
いい環境だと思います。朝鮮族スーパーでは韓国のお菓子も手に入るし、
「韓国ファッション街」なども存在する。韓国料理店、朝鮮宮廷料理店
はまさに100メートルに一軒くらいあって、メニューもハングル文字。
 それでも韓国人留学生にいわせれば、「本場の味とはちょっと違う」らしい
し、「本物のキムチを見つけるのは難しい」とのこと。そりゃ、贅沢だよ、
実際の所。日本料理屋なんか、4軒しかないもんね。1軒しかまともじゃない
し遠いし高いし、それでもあるだけでありがた〜く感じているというのに。

 まあ話はそれましたけど、そんなこんなで犬肉(狗肉)を食べる習慣のある
彼らの需要に応えるべく、たくさん、たっくさん、あるわけですな。そういっ
た専門店だけでなく、こちらでは韓国料理屋に入れば狗肉は必ずあります。

 一口に狗肉といっても、やはりうまいまずいはあるそうで、季節からいうと
冬が一番美味しい、犬種(?)からいうと黄犬が一番美味しいとのことです。

 ワタシは無論、何を食べようがその国の文化だと思っておりますから、絶滅
の心配さえなければなんの異論もございません。ワタシの周りには、「狗肉絶
対にダメ」という人が殆どですが、それも自由であります。韓国人でも食べら
れない人はたくさんいるし。以前、韓国人友達と旅行したときのこと、中国人
から「韓国は犬を食べるんだろ?野蛮だな、広州と一緒だな」といわれてその
友達が大激怒して大変なことになったことがあった。文化は尊重しなきゃ。
ワタシも「馬を食べる」といって驚かれたことあるもんね。

 ただね・・・屠殺するところは、やっぱ犬って「ペット」って概念があるか
ら。屠殺するのを見ちゃった人は、けっこう狗肉嫌いになるケースが多い。
「あそこで見ちゃったから、もう二度とあの店には行かない。」こんな事を言
う人もいる。ワタシにも実際、こんなことがあった。

 学校内にも一軒韓国料理店があって、まあ味の方は本場とはほど遠く、韓国
人だけでなく日本人もあまり利用しないところですが、一応「韓国」と名が付
けられているから狗肉はある。ポピュラーな薫製とか、頼めば鍋もOK。
 ま、それはそれとして、初め、ここの狗肉は冷凍でどっかから仕入れている
と思っていたんですな。
 店の近くに、鎖で繋がれている犬がいて、学食のついでなんかに顔見知りに
なって、すっかり「かわいいヤツ、ホレ。」など餌をやったりする関係にまで
なったところが、いつの間にか消えている。学校の職員の人も一緒に遊んでた
りしたから、どうしたかな、もらわれていったか、と思いながら、いつもの路
地を歩いていたんですな。この辺からもうお分かりと思いますが。
 路地と路地の間に、洗濯物を干す場所がある。
 いやもう、見事に吊されちゃって、皮まではがされちゃって。
 恐らく、注文があったんでしょう。見る影もなくなって、かの犬は中国人
の胃袋におさめられてしまったわけです。これはかなりショックでした。

 馴れた犬が〆られるのはそれが最初で最後(と思うんですけど)ですが、
食用の狗肉は、運が良ければまたは悪ければ、見ることができます。例えば、
バスに乗って外を眺めていたときのこと。狗肉専門店の前に、数匹のダルメシ
アン風が。自由市場を眺めていたときのこと。テーブルの上に、数匹の皮をは
がれて、歯をむき出しにしたのが棒のようにデーンと。
 という具合で、特に冬場は需要が多いし腐りにくいので、よく目にします。


 では、ハルビン人は犬を食用にしか思っていないのか?いやいや、ハルビン
人の犬好きはまったく日本と同じか、もっとスゴイくらいなのです!
                             (つづく)