洛陽2001年5月2日

朝起きてから、U同学が両替をしたいというので中国銀行を探しに散歩に出た。途中で朝食を食べようということになり、食堂に入った。そこの朝メニューはクレープ生地のようなものを細切りにして、それをスープに入れて食べる「驢雑物湯」なるものしかなかった。「ロバスープ?朝からロバ肉かぁ...」と一瞬思ったが、まあ仕方なくそれを食べた。
やはり朝からロバはキツかった。スープは一見辛そうだけど味はないし、中の具もロバの臓物らしきものとねぎ等が入っている。ロバの臓物なんて朝から食べるようなものではない。だんだん気持ちが悪くなってきたので僕は途中でやめた。人民は平気な顔をして「朝ロバ」している。洛陽では一般的らしい。
今日は少林寺へ行くことにしていた。有名な「少林寺拳法」発祥のお寺である。鄭州から行くのが一般的なのだが、洛陽からも行ける。僕らは洛陽駅前からバスで行くことにし、少林寺行きの中公共汽車に乗り込んだ。バスはすぐにいっぱいになり、車掌(?)のお兄ちゃんがお金を集め始めた。請求された金額は一人30元だった。「地球の歩き方」には7元とかいてあったので「なぬ!?」と思ったが今更おりるわけにもいかないので、僕らはしぶしぶ払った。
少林寺まではおそらく2時間くらいだろうと予測していた。だが、途中で水晶専門店に寄ったり、三蔵法師ゆかりの寺に寄ったりし始めた。これは少林寺行きへの直行バスではないのか?周りの中国人たちもいぶかしげにしている。車掌のお兄ちゃんの話を聞いているとどうやらこれはツアーらしかった。直行バスだと思って乗ったバスが、実はツアーバスだったのだ。でも駅前ではツアーだなんてことは何も言ってなかったし、僕らだけではなく、他の中国人たちも知らず知らずのうちにツアーに参加させられていた感じだったので、僕らはまんまと罠にはまったらしかった。今更降りるわけにも行かないので、おとなしくツアーに参加することにした。嵩山に入ると途中からガイドのおばさんが乗ってきた。これから彼女について色々回るらしい。
最初にいったのは「永泰寺」という地球の歩き方にも乗っていない尼寺だった。中国人もあまり知らないのかもしれない。中国語でのガイドではほとんど聞き取れず、このお寺にはどんな由来があるのかさっぱりわからなかった。尼寺の境内に泉があり、そこから湧き出る水を中国人がペットボトルに汲んでいる。どうやらこの水を飲むと何か良いことがあるらしい。だがどうみても飲めるような水ではない。中国人も自分の砿泉水(ミネラルウォーター)と見比べて「これで飲めるのー?」と言っていた。飲めんだろ、それは...。
それから更にバスは山道を登り、3時にやっと少林寺の駐車場に着いた。ガイドのおばちゃんが「今からご飯休憩、30分ね」といって、駐車場の前の食堂を指差した。お昼を食べていない僕らは軽く麺でも食べようと席に着いた。U同学は玉子麺を頼み、僕とM同学は牛肉麺を注文すると小姐は「3人で同じものを注文してくれ」といった。何なんだよ!と思ったが3人とも牛肉麺に統一した。隣のテーブルに同じツアーに参加している親子連れがいて、母親が私に「貴方たち、何注文したの?」と聞いてきた。「牛肉麺だ」というと、その母親は小姐に向かって烈火の如く怒り出した。
「さっき、私たちが牛肉麺を注文したらないって言ったじゃないの!!どうしてこの子達には牛肉麺だすのよ!ふざけんじゃないわよ!」というような内容のことを怒鳴り散らした。小姐が何か反論すると厨房の中に入っていき、更に激しく怒鳴りまくった。この親子連れは牛肉麺を食べたかったらしいのだが、ないといわれて普通の菜(おかず)を頼んだらしかった。小姐が料理を持ってきても、その料理には一切箸をつけようとはせず、ひたすら怒り狂っていた。6歳くらいの娘がおかずをちょっと箸でつまんで口に入れると、「やめなさい!」と怒った。
僕らは唖然としてことの成り行きを見守っていた。何もしていないのに何だかとても悪いことをしたような気分になってしまった。女の子もお腹が空いていたのかとても料理を食べたそうだった。でもヒステリー状態の母親が怖いのか、おとなしく箸を引っ込めていた。ガイドのおばさんがやってきて「別生気、別生気(そんなにおこらないで...)」とその女性をなだめた。
親子連れは結局料理には一切手をつけず、店から出て行ってしまった。ガイドのおばさんが僕らにも「ここのお店はよくないから出よう」と促した。僕らはまだ麺を食べていない。でもツアーの団体は先に行ってしまう。僕らは仕方なく店を出た。食い逃げは知っているが、注文逃げなんて聞いたことがない。出掛けに厨房をチラッとのぞくとちょうど牛肉を刻んでいるところが見えた。あ、僕たちの牛肉麺...。
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