9月13日(金)〜14日(土) 梅里雪山の懐へ―徳欽一泊小旅行

朝まだ暗い6時前、陳さんとわたしはすでに起き出して、
"お山"の前にじっとたたずんで待っていました。
さすがに明け方の冷気は身に染みます。
空が白み始め、民宿の裏手の空が明るくなると、しだいに手前の山がはっきりと
現れてきました。が、その背後は雲が低く垂れ込めて"お山"は覆われたままです。
そう簡単には聖なる姿を現さないカワ・カルポ、残念ながら朝焼けの荘厳な姿を
目にすることはできませんでしたが、雲にその姿を隠しながらも、空中に数本、
純白のカタをたなびかせて見せてくれたのでした。

小麦粉を花形に巻いて蒸した花巻(ホアジュア)とお粥、バター茶の朝食を終えた
わたしたち一行四人は朝8時、観景台を後にしました。

出発から五分とたたないうちに車は停車。最後の参観地"お山"の神さまを祀る
"飛来寺"に立ち寄ります。
四方に反りかえった屋根の真ん中に小さな櫓を載せたこのかわいらしいお寺は、
あたかもカワ・カルポを飾る大粒の真珠のように朝日に輝いています。
広い石段をおりると、すでに地元のチベットの人たちがちらりほらりお参りに来て
いました。
まず方形のお堂の右脇に設けられた大きなマニ車を回してから、銀の器に入った
バター灯明を買って中に入ります。大中小とあるお灯明はそれぞれ10元、5元、3元。
細かいお金がなかったので10元のをもらってお供えすると、中にいた行者風の人が
木の枝のようなものでさかんに"御払い"(?)をしてくれました。
本堂の中央には宝冠姿の観音菩薩(?)、向かって右にチベット密教を伝えたという
グル・リンポチェ(パドマ・サンバヴァ)、そして左側にはゲルク派の開祖ツォンカ・
パの金色の像が安置されています。どうやらここはニンマ派のお寺のようです。
お寺を出たところにある二階建ての建物には尼さんもおられました。

例によって戻るのがまたたいへん。見かねたのかタシさん、「負ぶってやろうか?」
と言ってくれたのですが、そのお気持ちだけ頂戴して、なんとか自力で車まで
たどり着きました。それにしても、この程度の高度で酸欠に悩まされるとは我ながら
情けない限りです。

徳欽の町を通り抜け山道を上がったところの展望台に至る頃には、空を覆っていた
薄雲もすっかり晴れて抜けるような青さ、それなのに "お山"だけは相変わらず厚い
上着をまとったまま…。雲がなければさぞかし絶景なのに…、
いえ、むしろ厚い雲に覆われた姿こそ聖なる山には相応しいのかもしれません。
これでお別れというとき、
純白に輝く鋭角の峰が雲間からちらりとその顔をのぞかせてくれました。
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