自貢編その1

 前回は超メジャー観光地を紹介したが、本来、私たちは人ごみが嫌いで閑散と
して鄙びた観光地が好きである。そんな理由で今回は自貢を紹介しようと思う。
とはいえ自貢は、一部のツアーコースに組み込まれていたりガイドブックにも
載っていたり、メジャーに限りなく近いマイナー観光地である。

 自貢は成都から約230km、バスで約2時間半の距離にある。朝早めに出れば
成都からの日帰りでも十分観光できる。成都の東南にある五桂橋バスターミナル
を定刻に出たバスは、高速道路を快適に走る。いつもの事だが、バス・トラック
・自動車全ての運転手が自転車に乗るのと同じ感覚で運転しているので最前列に
座ると怖い思いをする。市内・高速道路ともに道路の整備が進むのは結構だが、
交通ルールの徹底や交通マナーの向上も同時にすすむとよいのだけれど…。
そんな事を考えているうちにバスは自貢の町に入る。
高速道路は早くて便利だが、日本と同じで景色を楽しめず少々あじけない。

 自貢の町は、なにか懐かしい感じのする町だ。坂が多い以外には、これといっ
た特徴のないどこにでもある町なのだが、懐かしい。よくよく考えると、今の様
に発展する前の成都に少し似ているのかもしれない。あるいは80〜90年代前半の
中国の都市の印象に近いのかもしれない。

今回私たちが自貢で観光したのは、塩業博物館・恐竜博物館・しん海井の3ヶ所
だが、これらの場所に行く足として便利だったのは、3路と101路のバスだ。
この2つの路線が、バスターミナルとこれらの観光地を結んでいる。

私たちの乗ったバスは、乗客の便宜を図ってなのかバスターミナルを通り過ぎて
町中の「沙湾」に着いた。ここは、塩業博物館のすぐ近くで、まずは塩業博物館
を観光した。塩業博物館なんて、当初観光地としてはあまり魅力を感じていなか
ったが、建物といい塩に関する展示といい、予想外におもしろかった。
この建物は西秦会館とも呼ばれ、清の乾隆年間に陝籍の塩商人が同郷会館として
建てたものだそうだ。いい時代に贅を尽くして造った建物らしく屋根の形が特徴
的だ。中国でよく見る上に跳ねあげたような屋根だが、それが何重にも重なって
いて、塩業で繁栄した町の象徴?といった感じである。内部は、自貢の塩業の歴
史を模型を使って分かりやすく説明した博物館になっている。

塩というと普通、海から採る・塩湖から採る(日本には無いが…)・岩塩を採る
(これも日本ではめずらしい)などが思い浮かぶが、自貢の塩は深い井戸を掘っ
て採取するようだ。その為、深い井戸を掘る技術が発展した。
それどころか、井戸を掘った副産物として得られる天然ガスを採掘・塩の精製の
両方に利用している(それも清代から)という展示があった。
当然、このようなシステムは自貢が世界初である。
中国の科学技術の高さに驚かされる。        
                           (自貢編つづく)
注)2002年当時の内容です