「剣門蜀道」編 2

(明月峡)
翌日、広元観光のメイン・明月峡を訪れた。
正直なところ渓谷としての景観は二流である。
ここが有名なのは、古蜀道の難所のひとつであり、
渓谷の断崖に桟道を作る為にあけた穴の痕が残っていることにある。
古くから一部修復された桟道もあり、
断崖から突き出たように懸かる木造の桟橋は心許なげで、
実際にこれを川沿いにずっと歩くとするとかなり怖そうだ。
一見の価値はある。しかし、マイナー観光地だし、
この桟道をわざわざ見学に行く外国人は珍しいだろう…と思いきや、
日本の三国志マニアの間ではかなり知られた存在らしい。
蜀が中原を目指すルートであったのは言うまでもないが、
ここは中国中央電視台の製作の大河ドラマ(?)『三国演義』のロケ地でもあるのだ。
三国志マニア、とくに蜀・諸葛孔明ファン必見の地なのである。
私たちは三国志マニアでもなんでもないので、目頭を熱くすることもなかったが、
渓谷とその断崖に作られた桟道を見、
また実際にそれを踏みしめて感慨にひたるファンは少なくないのではないだろうか…。

また、唐代の詩人李白がこの地を訪れ「蜀道難」という詩を詠んでいる。
李白が「蜀道の難きは晴天に上るよりも難し」と詠んだほど通行困難な道だったのだ。
バスをひょいと降りて見学に行っただけだと
「ふーん、あっそう…」で終わってしまいそうだが、
よくよくそのバスの通っている道がすごい。ちょっと珍しいが、
崖にコの字型の切込みを入れたような道路なのだ。明月峡付近は、
片側が川に面して開けてはいるけれどまるでトンネルのような道がしばらく続く。
車2台がすれ違うのがやっとの幅しかない道をバスが危なげに砂煙を上げて走って
いるのだから、私的にはそっちのほうが現代版「蜀道難」を実感できた
(もっとも高速公路が着々とできつつあるのだが…)。

入場券には渓谷遊覧クルーズ(?)も含まれており、船から渓谷・桟道を見学できる。
鄙びた観光地にしては、なかなかのサービスである。
広元市内の北門汽車站(広元賓館の近く)から乗合ミニバス利用、片道30分ほど、
半日あれば十分観光できる。

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