8月15日(水) ラサ市内観光(午前編)

気もそぞろになりながら昼食。
すると、隣に座った、色の研究をしているという23才、全然、箸を動かさ
ない。どうしたのかと見ると、テーブルの下、自分の膝の上にスケッチ
ブックを広げ、窓から見えるポタラ宮をスケッチしている。
「うまい・・・。」
さらさらと鉛筆で画いている横で、看護婦のお友達が、おかずをちょっと
づつ、お皿にとってあげている。

「絵描きさんか何かなのかな???」
この時はまだ、お互いの素性を知らなかったので、声を掛ける事も
できず見守ってしまう。

食事の後はホテルに戻って休憩。2:00位から、また観光へ向かう。
時間はある。

り「どーする?そーねい。行ってみる?」
そ「どーしよー・・・。」
り「まさかこんな目の前で食事するなんて・・・。」
そ「行く?」

あんなに探していた歌舞団が、偶然にも昼食場所の目の前で、しかも
これからはホテルに戻るだけ。自由時間である。
これは、”運命”だ。

ガイドにここから離団させてくれと頼みこむ。友達がいる事を説明し、
必ず戻るからと言うと、君達は言葉も解るし、午後の出発時間には
間に合うように帰ってくるなら、と渋々ながら承諾。この時程、中国語
ができて良かったと思えた時はなかった。

23,24才コンビが、バスの窓から身を乗り出して手を振るのに答え、
みんなのバスを見送る。

り「さあ! 行こうか!」
そ「うん! 行こう!」

道路を横断し、とりあえず門の前で記念撮影。
り「どうしようか。入っていいのかな?」
そ「誰かおらんかねぇ。」
り「いいや、入っちゃえ!」

入るとすぐ宿直室のような、門番(?)の小屋があり、外に女の子が
座っている。
(この子が引き留めてくれたらな・・・。)なんて思っていたら、案の定
「あんたたち、どこ行くの?」
と聞いてきた。

そ「私達、人を探しているんだけど・・・。」
り「格多っていう、琵琶を弾いている・・・。」
そ・り「知らない??」
門番「格多・・・、太っている??」
そ・り「ううん、違う違う。(今思うと、これは正しかった・・・。)」
門番「子供でしょ?」
そ「ううん。もう、27? 28? 29?」
門番「・・・・? 1楼、2楼、3楼のどれかにいるでしょ。」
り「1楼、2楼、3楼ってどこ?」
門番「あっち。」

仕方なく、”あっち”に向かって歩き出すが、4階建ての宿舎がいっぱい
あって、どれが1なのか2なのか、ましてやこれだけの部屋数の中から
どうやって格多を捜し出せばいいのか。
とりあえず、ずんずんと中に入っていくと、中庭みたいな所でおじさま方
がお食事中である。音楽なんかかけちゃって、ちょっと入っていけない
雰囲気。
入り口付近でウロウロしていると、中からひとり出てきた。
り「あ、あの・・・。」
そ「人を探しているんだけど・・・。」
り「格多っていう、琵琶を弾いている・・・。」
男「格多、格多・・・。あそこだろ。」
り「えっ? ここ? この建物?」 
男、スタスタと歩きながら、「ああ。」
り「え、え、あの、この建物のどこ・・・?」
男、歩き去りながら、「ここだ。」
と相変わらず建物全体を指差して行ってしまう。

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