一時帰国編

そして、当たり前なのだが道行く人がみんな日本語をしゃべっているので、
最初の2、3日は、すごく気持ちが悪い。
中国では、遠ーくで聞こえる日本語に、敏感に反応してしまうのだが、
帰国当初は、耳に入ってくる日本語を全部、聞き取ろうとして反応してしまうのだ。
だから、耳が日本語環境に慣れるまでは、かなりストレスを感じる。
そして2、3日経って、日本語が雑音と化すと、
遠くで聞こえる中国語に、素早く反応するようになるのだ。
あっっ、中国語・・・・と、キョロキョロし、
それが女性で、なおかつ人相が良さそうな人だと、
とりあえず、”にーはおーっっ”と、笑顔で話しかけてみることにしている。
実は香港人で普通語が苦手・・・ってオチも多々あるのだが、
中国語で話しかけると、不思議とあまり引かれずに相手をしてもらえることが多い。

私は今、街で怪しげな日本語で、「アナタ日本人デスカ?」と聞かれたら、
思いっきり警戒して引くが、日本では自ら、この「怪しい人」になりまくっている。

もちろん「何か用?」と、つっけんどんにされることもあるが、
こんなことで、メゲていてはいけない。
「私、今、北京で仕事しているの、中国語で話をしたかったから・・・」と
中国語でいうと、大概、態度が緩和されて、
時間があれば、そこそこ相手をしてもらえる。
それでも迷惑そうなら、ありがとう、じゃっっと、そそくさと立ち去れば良いのだ。

なぜ、こんなことをするかというと、とりあえず、一週間だろうが10日だろうか
そんな短期間であっても、中国語を全くしゃべらないと、
口語力が顕著に落ちるのだ。
10日程度では聴力は変わらないが、私の場合は口語がガタっと落ちるので、
とりあえず一週間に一度くらい、中国人と中国語で話すように
心がけている。
母国語だって使わないでいると、どんどん怪しくなるのだから、
外国語はなおさらで、勉強するのは大変でも忘れるのは、一瞬である。


日本で中国語を話すと、「日本語が上手いねぇ」と、
周囲の日本人に誉められることが多い。
日本人ですから・・・と、言っても、「いやー、ホント上手いねー、
日本人みたいだね。留学生?もう何年いるの?」と、
まるっきり信じてもらえないこともかなりある。
これは私の中国語が上手い、下手、以前の問題で、一般の日本人の中で、
中国語を話す日本人、という概念が希薄なのだと思う。

以前、郵便局で荷物を送ろうとしていたところに、留学生時代の友人で、
その後、日本に留学にきた韓国人男性から携帯に電話がかかってきた。
私たちの共通語は中国語なので、「にーはおー!」と、小声で出たら
周囲の人たちが一斉に振り返って私を見る。
とりあえず、「後でかけなおすね」と言ってすぐに切ったが、局員さんが、
とっても、ゆっくりと大きな声で、「こーちーらーは、どうやって、送りますか?」
と尋ねてくる。
私、日本人なので普通にしゃべってください・・・と言おうと思ったが、
ま、いっか・・・と思って、「海便でお願いします」と言うと、
「は?」と聞きなおされたので、大きな声ではっきりと、
再度、「う・み・び・ん、で!」と答える。
私の日本語が聞き取れないっていうの?と、ちょっと不機嫌モードになったところ
に、
「あのー、船便、のこと、ですか?」と、恐る恐る、これまたゆっくりと聞かれ、
ん?ふなびん?そう言えば、そんな日本語あったっけ・・・。
中国語では”海運”なので、無意識に、海運だから→海、海便、
と言ってしまったらしい。
恥ずかしいっっ、「私、日本人ですから普通に・・・」なんて言わなくて良かった。
送り主を書くところに、日本語で名前を書くのがはばかられ、つい”senben”と
ローマ字で記入し、郵便局を後にした。
こういった、ちょっとした言葉を間違えて恥をかくことは、かなり多い。


                    (一時帰国編つづく)
http://homepage3.nifty.com/kamakurakoka/