番外編 オヤジ魯国を行く

(孔府)

闕里街を挟んで孔廟の東隣が孔府である。
ここは孔子の子孫が代々暮らし、またいろんな行事をおこなった所だ。
南側が役所で、北側が住居になっている。
ここは専門的知識に乏しい観光客が楽しめるネタが少ない。
建物は立派なのだがオヤジ的にはやや退屈してしまった。
それでもなにか面白い物はないかと探すと、いくつかあった。

まず、チケットをもぎってもらったすぐ先にある「重光門」。
門の両横に壁が無いので門の役を果たしていない。
普段は閉じたままで、重要な祭礼・儀式の時だけ開けるそうだ。
実質的な役割でなく、それのもつ意義を重んじて建てられた門だ。
最近、中国の観光地でよく目にする分別ゴミ箱と同じだ、といえば
口が過ぎるだろうか? 
つまり、「ゴミはゴミ箱へ」「リサイクルに取り組んでいます」という意義を
重んじて立派なゴミ箱を設置してあるが、多くの人はその辺へポイと…。
もっとも、以前と比べるとその辺りのマナーも随分改善されてきたようで、
都会のタバコのポイ捨ては東京と比べても少ないかもしれない。

重光門から立派な建築物を見ながら奥へ進んでいくと内宅門へ行き当たる。
ここより先(北側)が歴代の孔子の子孫が暮らした住居である。
許可なくその内側へ入ろうとしたものは、その場で打ち殺してもよかったそうだ。
その西側の壁に、石でできた流し台のようなものが突き出ている。
水汲みの人夫もおいそれとは中に入れないので、ここに水をあけると、
内側の水溜めに水が入るという仕組みらしい。
今は内側に水をうける物は何もないので、内側から見ると実に間抜けに見える。

堂楼と呼ばれる二階建ての建物が、前後東西にあわせて6棟建っている。
ものの本によると、その前堂楼に76代孔令貽と彼の4人の夫人が暮らしていたと
ある。
倫理学の代表格である儒学の、しかも孔子の子孫が4人もの夫人を…と
オヤジらしい下世話な考えが頭に浮かぶ。
儒教で大事とされる徳は「仁・義・忠・孝」だというから、4人の夫人に等しく
人情深く接し、正しく行動し、誠意を尽くし、彼女達の親を慕えば没問題なので
あろうと、納得している。
もっとも、時代と制度の違いと考えるのが普通であろうか。

孔府の一番奥は花園になっている。
「きわめて素晴らしい」と絶賛されているのだが、季節が悪かったのか、
町中の公園と変わらない景色であった。この花園は「鉄山園」と呼ばれている。
その名前の由来である鉄鉱石の大きな塊が3つ4つ西北の隅に存在するが、
「点景として配して」いるとは言いがたく、転がっているといった感じだ。

                            (つづく)
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