8月15日(水) ラサ市内観光(午前編)

「進来!!」
懐かしい声。
そっとドアを開けるとそこは自転車置場などの納屋と通路になっている。
そ「格多!」
り「格多!」

奥の部屋から飛び出してきたのは、そう、あの”格多”!!

そ「あああ〜っ! 格ー多ー!!!」
ち「きゃああ!!」

12年ぶりの再会。もう、二度と会えないだろうと思っていたのに・・・。

格「おまえたち、いつ来たんだ?!」
そ・り「昨日〜・・・。」
大泣きするそーねい、興奮して”きゃあ〜”しか言えない私。
そ「私達の事、覚えてる? そーねいよ!」
り「りんむーだよ!」
うん、うんとうなずく格多。そしてそーねいと私、思わず声をそろえて
「格多、太ったぁ〜!」

格多は、ニコニコと笑いながらお腹をさすり、私達を部屋へと入れてく
れた。

部屋にいた男性と女性が気をきかして外へ出てゆく。
きちんと片付いて、こざっぱりとしたきれいな部屋。チベットらしい
絨毯とカーテン。本棚には本やテープがきれいに並べられ、大きなテレビ、
部屋の片隅にギターがたてかけてある。

挨拶もそこそこに写真を撮る。
そ「みんなは?ここにいるの?」
格「ああ!」
り「ラールーは?」
格「いるよ!」
そ「衛東は?」
格「いるよ!み〜んなここにいるよ!!」
そ「格多、結婚はしたの?」
格「うん!」
そ「はあ? いつ?」
格「5年前、かな?」
そ「子供は?」
ホラっと写真を指さす。本棚の上には可愛らしい赤ちゃんの写真が何枚
も飾ってある。

り「奥さんは?」
格「今、出てっただろ。」
そ「呼んできなよ〜!」

言われると、ウンウンとうなずき、格多は外に呼びに行く。
入ってきたのは、さっきこの部屋から出ていった女性。英語のガイドを
しているとのこと。藏族らしい顔立ち、優しそうで控えめな感じの素敵
な奥様である。

格「ついこの間、昔の写真を見たんだよ!お前達と一緒に撮った・・・。
なあ?」
と、奥さんに嬉しそうに話す格多。
忘れないでいてくれたんだ、と嬉しくなる。

そ「私達、時間がないの。もう行かなくちゃ。」
格「おう! そうか・・・。夜は? 時間ある?」
り「明日なら、多分・・・。」
格「よし、明日ホテルに戻ったら電話しろ。」
住所と電話番号はすでに貰い済。とりあえずは連絡のしようがある。

奥さんへの挨拶もそこそこに、おいとまとなる。
門の外まで送ってくれる格多。目の前にはポタラ宮がそびえたつ。
り「いい所に住んでるねぇ。」
「ああ!」と誇らしげにうなずいた顔を見て、(幸せなんだなぁ)と
安心する。

り「そうだ! ポタラ宮、入れて写真撮ろうよ。」
ラサで、格多と、まさに記念の一枚である。

タクシーをつかまえ、「明日、電話ね!」と念を押されながら乗り込む。
ホテル名を運転手に告げるなど、相変わらずよく立ち働いてくれる。

タクシーが走り出す。
ポタラ宮前、ほとんど車が走っていない広い道路の真ん中で、午後の強い
日差しの中、眩しそうな顔しながら、満面の笑みで手を振ってくれている
ちょっと(?)太った格多の姿を見た時、私は本当にここに来れて、彼らと
知り合えて、12年前、思い切って留学しておいて良かったと、心から思った。


                            (午後編へつづく)


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