一時帰国編

 
どうやら、私のことを最初は中国人だと思ったらしいが、
私の中国語が訛っていたので、
(私に気を使ってか、”下手”とは言わなかった)、
田舎の出身か華僑だと思ったという。

こんなに愛国心のない中国人に初めて出会ったというくらい、
この方は、中国と中国人が大っキライな人であった。
いわく、「俺は中国人とは関わりたくないんだ」とのこと。
私が、北京で働いているというと、「ボスはナニジンだ?」と
間髪いれずに、血相を変えて聞かれ、思わずひるんでしまった。
にっ、日本人だよ・・・と答えると、
「そっか、それは良かった。いいか〜、これだけは忘れるな、
中国人の下で働くなんて、自分に対する”侮辱”だぞ!
この先、何があっても、それだけは絶対に駄目だ!」と、
めちゃめちゃ真剣な顔で言われる。
”侮辱”って、言われてもなぁ・・・と、さすがの私も返答に困って
しまうではないか・・・。
北京発成田行きなだけに、乗客の大多数が中国人である。
前からも後ろのシートからも中国語しか聞こえない。
この環境で、中国語でこんな事を話すのは、
ちょっとマズいんじゃない?と思うが、
全く気に介さずに、「中国人には気をつけろ」だの
「中国は最悪だ」だの、中国の悪口のオンパレードである。
話題が話題なだけに、せめて日本語で・・と思い、
「日本語、上手いでしょ?私の中国語下手だから日本語で話そうよ」
と提案してみると、「お前の中国語、ぜんぜん問題ないよ。
俺も中国語の方が楽だし、中国語でいいよ」と、
あっさり却下されてしまった。
違うんだよー、そういう問題じゃないんだよ・・・と思うが、しょうがない。

何でそんなに中国がキライなの?と聞いたら、なんでも
彼はいわゆる”超”特権階級の生まれで、
非常に豊かで恵まれた幼少生活を送っていたらしい。
しかし、そのせいで、文革で迫害されて父親が殺され、
家は破壊されて財産・家財は略奪、家族は散り散りとなり、
自分は日本へと留学(避難?)したのだという。
そういった背景であれば、中国に対する尋常でない嫌悪感も頷ける。
(一時帰国編続く)

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