番外編 オヤジ魯国を行く

(尼山孔子廟・夫子洞)

まずは、尼山方面へ…尼山孔子廟・夫子洞に直接行くバスはない。
正確には、それらの前まで連れて行ってくれる公共交通機関はなく、
バスを下車したあとは徒歩で詣でることになる。
尼山行きの近郊バスの終点は「尼山水庫(ダム)」で、そこから徒歩で行けるが、
孔子廟へ繋がる道との分岐でバスを降りたほうが幾分近い。
運転手に夫子洞に行きたいと告げれば、そこで降ろしてくれるだろう。
尼山行きのバスは、近郊バス発着場(静軒東路をはさんで曲阜の長距離バス
ターミナルの対面)から20〜30分おきに出ている。
曲阜市街を出発したバスは、最初のろのろと舗装された広い道路を走りながら
客を拾っていく。そこまでは退屈なのだが、細い道路へ右折してからが俄然
楽しい(?)バスの旅となる。一部未舗装の細い道路を、集落を縫うように
走っていく。市街地でさえ田舎っぽい曲阜の郊外である、垢抜けない田舎らしい
集落や一面の畑を車窓に眺めることができる。
分岐でバスを降りたら、ひたすら舗装された1本道を行けばよく、迷うことは
ない。なだらかな上り坂をダラダラと登り、ようやく下りにさしかかると、
孔子廟はすぐそこだ。
速く歩いて45分位の距離(3km強)。
分岐から歩けば最初に孔子廟に、水庫から歩けば夫子洞に行き着く。
両者の間は20mほど。
尼山孔子廟は、夫子廟とも尼山書院とも呼ばれる。ときどき、社用車(?)で
サラリーマン風中国人の小グループが訪れるが、それ以外はひっそりとしたもの
だ。のどかな雰囲気は楽しむに値するのだが、残念ながら、目の肥えた観光客を
唸らせるような物はない。
それでも大成殿には孔子像が安置されているし、孔母井とも蔵書井とも呼ばれる
井戸があったりもする。
この廟も木々に包まれているので、木陰でのんびり時間を過ごすのもよいかも
しれない。ただ、帰りのバスの時間(曲阜へ向かう最終バスはPM4:20に尼山水庫
を出るそうだ)には要注意。
孔子廟の門を出た左手に観川亭がある。
孔子が川の流れをながめて「逝く者は斯くの如きものかな」と嘆いた故事に由来
するらしい。ここから見える川は沂河だ。オヤジ的には、のんびりした風景に
懐かしさを覚える程度で、人生の儚さを嘆く心境には至らなかった。
その観川亭の下(崖を下ることもできるが、レイ星門を出て石段のついた道を
通ることを薦める)にあるのが夫子洞だ。夫子は孔子の別称。
この小さな石室で、孔子は生まれたと伝えられる。
ここは自分の思考を完全に停止させて、「孔子はここで生まれたんだ」と思い
込むのがよい。そうだ、絶対ここで生まれたんだ…と。
孔子は、この小さな洞窟で生まれ幼少期を貧しくも勤勉に学び、曲阜に学園を
開くまでの間、この地でその教えを暖めてきたんだ…と。
洞に頭を突っ込んで中を覗いてみたら、タバコの吸殻がひとつ落ちていた。
現実に引き戻されると同時に観光客のマナーの悪さに怒りを覚えたが、
ここは聖地、ぐっと抑えて吸殻をゴミ箱に運んだ。
                            (つづく)
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