ローカルスタッフ編 

さて、話がそれたが、そういった出稼ぎ組の人は、アパートで複数の友人らと
一緒に暮らし、何年か働いて、地元へと帰っていくようだ。
私の会社にいる女性スタッフも、ほとんどが他所の土地から来ているので、
みな、郊外のアパートに数人で暮らしている。
社員の出入りも激しく、「田舎へ帰る」といって辞めていった子も、
この一年の間だけで、何人かいる。

彼女たちは大概、郊外のアパートに住んでいるので、通勤にも1時間〜1時間半、
かかるという。
そうは言っても首都なだけに、中心部は家賃が高いので、
郊外に住まざるを得ないらしい。
1ベッドルームに3人とか5人とか、一体どうやって暮らしているんだろう・・・と
思うが、
多くの人が、そのような共同生活を送っているそうだ。

ボスの通達で同僚とはお互いに給与や待遇の話はしないことになっているので、
彼女たちの待遇を詳しく知らないが、月に1000元〜3000元くらいだと思う。
(日本円で1万5千〜4万5千くらい)
日本では高卒と大学院卒の初任給が3倍になることはあり得ないと思うが、
中国は、それが”あり得る”上に、それが「当然」といった感がある。
同じ大学卒でも、有名一流大学と地方の三流大学だと、やはり
給与面で大きく差別されるのだ。
中国とは、実は恐るべし学歴主義、学歴社会なのである。

ちょっと話が脱線するが、違法の出稼ぎ者の生活を垣間見る機会があったので
紹介しよう。

先日、いつも利用しているCD屋さんに行ったら、商品がゼロであった。
今日は警察が来るから、ここにはない、家にあるから見に行こう・・・と言われ、
その店を利用するようになって大分経つので親近感もあり、
興味もあったので、彼女の家に行ってみることにした。

店から徒歩5分ほどの場所にある彼女の家は、
裏通りのレンガで出来た平屋が立ち並ぶ、
スラム街っぽいところにあり、思いっきりひるんだが、
ここまで来て、帰るわけにもいかない。
そして、どうせ来たからには、写真の一枚でも撮りたかったが、
それもあまりに失礼なので、そうも行かない。

彼女は、安徽省から夫婦で出稼ぎで来ている、と聞いていたが、
そういう人たちの生活を垣間見たのは初めてである。
4畳ほどの土間のようなスペースに小さなベッドが一つ、
丸いスチール椅子と小さなテーブルが一つずつ、
家具らしい家具はそれだけ。
水道はなく、窓際に一口コンロとポットがぽつんと置いてあり、水道はない。
しかし、CD屋さんなだけにヤケに豪華なステレオがあって、
妙にミスマッチに思える。
全体が私の家のキッチンほどのスペースで、建てつけは悪く隙間だらけ、
冬の室温は外気と変わらないのでは・・・と思うような暖房器具のない
部屋に夫婦二人で暮らしている。
共用トイレは付近にあるのだろうが、お風呂はどうしているんだろうか。
一般のマンションなどでは、水洗トイレにセントラルヒーティング完備が当たり前だ
が、
都市部であっても、このような住宅に住む人は今でもオマルを使用している。
朝になると、近くの共用トイレに捨てにいくそうだ。
このような住宅では水道がない、ガスがない、というような所も珍しくないのだ。

中国人の低収入層というか、地方からの出稼ぎの人の
生活は、おしなべてこのような感じなのだろうか。
もしここに最愛のダーリンと二人で暮らせ、と言われたら、私はごめんだが、
この若い夫婦は、私が見る限り、仲良く、幸せそうに暮らしている。
「すごい所で驚いたでしょう」と、笑って言っていたが、
別段、不満そうではなく、やはり幸せそうなのだ。
「北京でお金を稼いで田舎に帰って、子供を生むの」とも言っていた。

もともと農村部と都市部の生活水準の格差が激しい国なので、
農村部出身の彼らにとっては、貧しいとか、不衛生とか、そういった
概念が我々と根本的に違うのだと思う。

今、私の住居環境は、彼らの十数倍恵まれているが、
物質的には豊かでも、精神的にあまり豊かとはいえない暮らしである。
彼女の家からの帰り道、広くて快適なマンションで一人寂しく暮らすのと、
狭いながらも楽しい我が家、どっちが良いだろう・・・と真剣に考えてみた。
家に帰った途端に、どんなに寂しくても、ここに一人の方がいいかなー、
やっぱり、あの暮らしは無理だわ・・・、と再確認したが・・・。

                     (つづく)
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