隣人 編

そして、お隣からは時々すごい親子喧嘩や夫婦喧嘩が聞こえてくる。
この前は土曜日の午後には、お皿が割れる音がしていた。
その直後、ママの悲鳴が聞こえたので、すわっ、事件か、と思ったら、
どうやら息子が篭城したらしく、パパとママが、入り口のドアを
ガンガンと蹴飛ばして「開けなさい!」と、騒いでいた。
ドアが隣合わせなので、隣で開けろー、ガンガンっっとやっていると、
私が借金取りにでも追われている気分になる。
そして、騒ぎが収まるまで出かけるに出かけられないのだ。
平和な土曜の昼下がりに、壁越しにすごい剣幕の親子喧嘩が
聞こえてくるのもなかなかオツな生活かもしれない。

私が見る限り、中国人の喧嘩はえらく派手である。
口げんか、殴り合い、ののしりあい、つかみ合い、何でもアリなのだ。
以前、ケンタッキーでみかけた女性同士の喧嘩は、髪をつかみあって
引っ張り合い、すごい形相であった。
喧嘩の理由は分からないが、レジの手前で派手に戦っていた。
道端とか、レストランとかでも、派手な喧嘩を見かけることが少なくない。
そして中国人は野次馬になって喧嘩を見るのが好きなようである。
道端で喧嘩が始まると、喧嘩だー、喧嘩だ、と嬉しそうに集まってくる。
そして何重にも取り巻いて、嬉しそ〜に、楽しそ〜に眺めているだけで、
誰も仲裁に入らないのだ。

以前、レストランで食事中に後ろのテーブルで喧嘩が始まり、
私の脇をお皿が飛んでいき、壁に当たって割れた。
うわぁ、あんなの当たったらどうしよう、と思いっきり硬直してしまった。
カップルの喧嘩だったのだが、どうやら、彼氏が「ブス」と言ったらしい。
彼女が激怒して、何ですって?もう一回、言ってみなさいよ〜、と
彼氏に再度お皿を投げつけ、おもむろに立ちあがって厨房へ突進し、
中で包丁を貸してよ、あいつが私をブスって言うの・・・と、わめいている。
すると、彼氏が逆ギレして?湯のみを、床にたたきつけているのだ。
怖い、怖すぎる・・・何で包丁?と友人と3人で動くに動けない。
結局、その女性は、店のマネージャーらしき人と、
従業員が数人で抱えて外につまみ出されていた。
彼女は店の外で大声で悪態をついていて、彼氏のほうは、
入り口に向かって何かを投げつけて捨て台詞を吐いたあと、
そのまま一人で食事を続けていた。
あんな喧嘩をした後、一人で食事を続けるあたり、ある意味感心する。
後味が悪くてとても食事どころじゃない気がするが、おいしいのだろうか。
うーむ、エキセントリックと言うのか、何なのか、
よく分からない人たちである。

夏場は窓を開けていることが多いが、休みの日などは、
向かいのアパートから、派手な夫婦喧嘩が聞こえてくることも
しばしばである。
そして、子供がクラリネットやトランペット、ピアノの練習している音色なども
聞こえてくる。
その練習曲が、国歌だったりすると、かなり笑える。

自慢ではないが、私の母校の小中学校は、学校の式典で
君が代を斉唱したことがないし、音楽の授業でも習わなかったので、
私は、君が代を歌えない。
しかし中国では、毎日・朝晩に国歌を聞くといっても過言ではないのだ。
中央電子台のニュースのオープニングなどで流れたりもするので、
日本の国歌は駄目でも中国の国家は中国語で口ずさめるのだ。
オリンピックなどでは中国の国歌のイントロに、
つい反応して、口ずさんでしまうほどになっている。
外国人の私でさえ、そうなのだ。
まして、愛国心の強い中国人のこと、
しかも国歌が日々の生活に密着しているだけに、
中国人が練習曲に国歌を選ぶのも当然と言えば当然である。

隣人の夫婦喧嘩やお皿の割れる音、下手な音色のクラリネット
聞こえてくる国歌なども、中国チックらしくて良いのかもしれない。
                         (隣人編ここまで)
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