瀋陽へ留学

私は最初に遼寧省省都瀋陽市の某大学の留学生科(本当は違う
呼称だが、とりあえず、こう呼んでおこう)に入学した。

瀋陽市は東北地方最大の都市であり、重工業が盛んな工業都市でも
ある。
といってもご存知ない方も多いだろう。
瀋陽には一昨年、脱北者のハンミちゃん一家が駆け込んだ領事館
があり、昨年だったか、元商社マンが誘拐された都市である。
言ってしまえば、そういった事件でしか名前が出てこないような
日本人には比較的なじみの薄い場所だろう。

瀋陽清朝発祥の地として、ヌルハチの墓稜や故宮瀋陽故宮)も
ある。
この故宮がまた、えっらくショボイのだが、一応、
北京の紫禁城と同じような作りである。
先に北京の紫禁城を見てしまうと、「入場料を返してくれ!」と
思うようなショボさだが、歴史的な価値は高いのだろう、たぶん。

また、歴史的に見ると日本との関係は良くも悪くもかなり濃密
なのだ。
満州国の頃は奉天と呼ばれていて、日本人が多く居住しており、
旧大和ホテルや日本軍が立てた病院などが現存している。
また日本軍が鉄道を爆破した満州事変が起こったのも瀋陽であり、
満州事変の記念館、「九・一八記念館」などもある。
この「九・一八記念館」は、入り口から出口手前まで、
日本の「侵略戦争の歴史」を写真やスライド、模型、
人形などを使って表現しており、
薄暗い照明の館内には、思いっきり反日感情をあおる展示が並んで
いて、日本語をしゃべるのが気が引けるような雰囲気で、
思わず無口になってしまう場所である。
ある種、下手に日本人だとバレたら、袋叩きにでもされかねない
ような暗澹とした雰囲気があるのだ。(まぁ、日本人の被害妄想
かもしれないが)

日本の侵略から敗走まで順を追って展示されているのだが、
最後の方になると、「敗走する日本兵から略奪した戦利品」など
と、ちょっと誇らしげに、日本軍の小銃などを展示してあるあたり、
日本人にはイマイチ理解できない感覚である。
そして出口付近は光がいっぱい差し込む明るい空間になっており、
そこには田中角栄トウ小平が握手している「日中和平」を
やたらと強調するパネルが何枚か、なんだか場違いというか、
わざとらし〜く展示されているのだ。
散々、反日感情を煽っておいて、最後にこれを見たからって、
日中和平を素直に肯定できるのだろうか?
なんだかなぁ・・・と、入り口から出口まで、あまり気分の良く
ない場所である。
                      (つづく)
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