回想:瀋陽へ留学

この「九・一八記念館」は瀋陽を象徴する場所のひとつで、
瀋陽で暮らした1年半の間、本当に多くの中国人に、
「九・一八記念館には行ったか?日本人は絶対に行くべきだ」と
言われた。

このため、瀋陽の対日感情はかなり複雑なものがあるのも事実である。
留学生の中でも、町で石を投げられた、というような話もきくし、
残留孤児も比較的多い地域らしい。

そうかと思うと、寮の前で日本人の女子留学生に次々と声をかけ、
「僕は田中健と言います。お友達になりましょう」と
勝手に日本名を名乗っている、めっちゃ友好的な怪しいナンパ?も
いた。
「僕は日本に行きたいです。合法で行くために僕と結婚してください、
ちゃんとお礼はします」という、ラブレター?をもらった友人もいた。
特に東北地方にはなんとかして日本に行きたい、という中国人も
多いのも事実で、見知らぬ人にやたらと親切にされても、
却って構えてしまったりして、本当に素直な気持ちで
相手を信じられないことも、やはりある。

満州鉄道を爆破した9月18日は、中国では「9・18」と呼ばれて、
中国、特に瀋陽では毎年それなりの行事が行われる。
ローカル新聞の一面は「日本人の元軍人が訪中して謝罪」などを
デカデカとカラー写真で掲載したりと、この日は一日、
満州鉄道を爆破されたことを偲ぶ日らしい。
まぁ、中国版の「リメンバー・パールハーバー」のようなモノなのだ。
授業終了後に先生が「日本人は今日は外出を控えるように、
夜は外出しないこと」と言う。
理由は「危険だから」。
普段は親日派の中国人の友人達もこの日ばかりはヨソヨソしいし、
韓国人の友人も、この日は一緒に出かけようとしない。

この日は夜10時半ジャストに町中に一斉にサイレンがなり響き、
テレビは放映を停止して、「国辱を忘れるな」といったテロップを
数分間にわたって延々と流し続けるのだ。

                      (つづく)
中国ビザ 航空券 港華