瀋陽へ留学

最初はクラスメートとも意思の疎通が上手くできないが、
同じテキストを使用して同じ速度で授業を受けているので、
クラスメート同士では、そのうち、何となくコミュニケーションが取れるように
なってくる。
なんせボキャブラリー量は同じだし、学んだ内容が同じなだけに
ほかの人には聞き取れない、発音も声調もめちゃめちゃな
中国語であっても、クラスメート同士なら通じ合えるのだ。
よく先生が「今、あんたたち何語で話してるの?」と
不思議そうな顔をしていたが、本人同士は学んだばかりの
中国語でちゃんとコミュニケーションを取っていたのである。
ネイティブも聞き取れないような怪しい中国語でも、
クラスメート同士ならちゃんと通じるのだ。

まだ瀋陽で一年目、韓国人の友人と買い物に出かけた時のこと、
バスの中で二人で中国語(のつもり)で会話していると、
向かいに座っていたカップルが「あの二人、何語で話してるのかしら?」
「うーん、ちょっと変だけど中国語じゃない? 南方人かな」と片方が答え、
「中国語の訳ないでしょ、ぜんぜん聞き取れないもの、あれは外国語よ!」
と断言していたので、二人でかなり凹んだ。
ネイティブが聞くと、まるで中国語に聞こえないような中国語でも、
外国人同士であればきちんとコミュニケーションが取れたりするのだ。

外国人が話す中国語は、やはり母国語の影響を受けるため、
声調が正確でないとか、巻き舌の発音が上手く行かないなど、
外国人独特のなまりになってしまう。
日本人には日本人のクセ、韓国人には韓国人のクセがあり、
欧米人には欧米人のクセがあるのだ。
欧米人の話す日本語とアジア系の人が話す日本語も
ちょっとアクセントが違うだろう、それと同じなのだ。

中国語の発音が難しいのは有名だが、声調と呼ばれるアクセントが
特に難しいと思う。
欧米人は特にこの声調が苦手な人が多いようで、聞きなれないと欧米人の話す
中国語は難しい。

北京のボス(オージー)の声調もかなりいただけない。
私も中国語の声調なんてなければ良いのに〜、と心の底から思っているが、
特に欧米人は総じて声調が苦手のようだ。
しかし、中国語は声調が命なので、ボスの話す中国語は
ローカルスタッフに通じないことも多々ある。
そんな時にも奥様(日本人)と私とだけは、バッチリ聞き取れるのだ。
「すごーい、なんであんたは聞き取れるの?」
とローカルスタッフたちに尊敬のまなざしを?向けられるのだが、
「外国人同士だと聞き取れるんだよ」と言ったら
それを聞いていたボスが大うけしていた。

韓国人の話す中国語も独特なので、すぐ分かる。
中国語があまり得意でない朝鮮族の人が話す中国語も
韓国人のなまりとそっくりなので、やはり母国語の影響なのだと思う。
瀋陽で、タクシーで相乗した人が韓国なまりの流暢な中国語を話していたので
「あんた、韓国人でしょ」といったら、ギョっとして振り向き、
「ううっっなんで分かるんだ? ん?そういうお前も外人だな。。。」
「うん」
「うーん、そういうお前は日本人だろう?」
と私の方もあっさり見破られてしまった。
長く生活していると見かけはすっかり中国に同化するが、
アクセントはやはり残ってしまうのだ。
そうそう、瀋陽ではタクシーに相乗りなんかも、乗客の意思に関係なく
行われたりするのだ。
乗客は「乗せていただいている」という気分になるし、
おそらく運転手も「乗せてやってる」と思っていると思う。
そんな不遜な態度なのだ。
タクシーに乗っていて、まだ空席がある時など、道端で手を上げている客がいると、
「どこまで行くんだ?」と、とりあえず止まって声をかけ、
もし同じ方向だと、先客に断りもせずにさっさと乗せるのだ。
たまたま同じ方向だったりしても、タクシー代が割り引かれる訳ではないのだ。
同じ距離を走って、2倍の料金が取れるのだから、相乗りは美味しいと思う。
雨降りの日や降雪時、出勤・帰宅ラッシュ時などタクシーが拾いづらい時は
相乗りとなることが多く、相乗り者の目的地を通るために遠回りされても
文句が言えないのだ。
文句を言ってタクシーを下されても次の車が捕まる保証がないので
おとなしく言われるがままに乗っているしかない。

そういえば、北京では相乗りしたことはない。
北京でも雨の日などはタクシーを拾いづらいのだが、
タクシーを拾えずにいると、ごくごく普通の人たちが「どこまでいくんだ?
○○までなら10元で行ってやるぞ」と、白タクに変身するのだ。
じゃぁ。。。と平気で乗り込む中国人も多いので、
「知らない人の車に乗ってはいけません」という日本の常識は
どうやら中国では通じないらしい。

タクシー話題が続いて恐縮だが、当時、瀋陽のタクシーは、
夏場にエアコンをつけると割り増し料金が取られるようになっていた。
エアコンに弱い友人が「エアコン止めて」と言ったら、
「この暑いのにエアコンを止めて走れるか〜、お前なんか
乗せてやらんっっ、今すぐ降りろ」といって、その場でタクシーを
おろされたらしい。(もちろんそこまでの料金は取られた)
また、雪が降ったりすると、「雪だから今日は倍だ」とか、
訳の分からないことを言われる。
「雪道は危険だから、本当はもう帰りたいのに、
それでも乗せてやるから倍払え。イヤなら乗るな」と来る。
まさに足元を見られている感じで、本当に不条理だと思うがしょうがないのだ。

ちなみに雨が降ると市場の野菜とかも高くなる。
理由は「今日は雨だから・・・」
雨のなか、わざわざ買い物に来てくれてありがとう・・・と
安くしてくれとまでは思わないが、高くするか?普通・・・。
何かが違うぞ、中国人!!!と思うことの連続である。

そういえば、タクシーの運転手に、発音を直されることもある。
「しー、じゃなくて、すーだ」と、ご丁寧に東北なまりに直してくれるのだ。
適当に流していると、しつこく納得のいくまで何度も発音させ、
「すーだ、もう一回言ってみろ、すー、うん、いいぞ、だいぶ良くなったぞ」と、
満足げに頷いている。(正しい発音は”しー”なのだが)
イメージ的には、オージーに「グッッディ〜」と挨拶したら、
「グっっダイだよ、グっっダイ」と何度も発音練習させられる感じだ。

欧米人などは一目で外国人だと分かるが、日本人や韓国人などの
アジア系は、黙っていれば分からないことも多いので、
「なんでアンタの中国語、そんなに下手なの?
香港人?華僑?朝鮮族?」などと言われることも多い。
さすがに、「なんでそんなに下手なんだ?」とまで言われると、
凹むというよりも、かなりムっとくるが、確かに下手なのだからしょうがない。
「だって私、外国人だもん」とい/うと、とたんに
「そうか〜、お前の中国語があまり上手いから、てっきり中国人かと思ったよ!」
と、手のひらを返したような態度に出る人も多い。
「くっっ、さっき下手って言ったじゃん・・・」というと、
「中国人だと思えば下手だが、外国人だと思えば、すっげー上手いよ」と
複雑な褒め方をされる事も多い。

瀋陽あたりだと、外国人が少ないから、日本人だと言っても信じてもらえずに
「このウソツキ〜、だったら日本語を話してみろよ〜」とまで
言われた事も、何度もある。
「こんにちは、ありがとう、」とか、適当に話してみると、
「そのくらいの日本語なら俺だって知ってるぞ。
”メシメシ” ”バカヤロー”、ほーら、すごいだろ。
お前はやっぱり中国人じゃないか!」
と、勝ち誇ったように言われたりもする。
普通、そこまで言うか? と思うが、まぁ、悪気はないのだ。

東北の人は、とても親切でお客好きだが、正直というか、
実直というか、とにかく物事をズバズバという、遠慮とか、
謙遜って言葉は、たぶん彼らの辞書にはないんだろうと思う。
年齢や年収、未婚・既婚といった超個人的な事も、
初対面だろうがお構いなしで、遠慮なくガンガンと聞いてくるのだ。
だから、初対面で、その歳で未婚なんて、問題があるんだろ?とか、
戦争の話題とか出てきて、この侵略者、謝罪しろ、くらい言われても
別段、驚かなくなってしまった。
ある意味、「お前の中国語、下手だなぁ」くらいの言葉であれば、
失礼度はかなり低いと思う。

誤解のないように言っておくが、13億とも言われる中国人が
全員こういうタイプな訳ではない。
東北や農村部にはこういった人がわりと多いが、
こういった人は知識階級の人から、「文化のない人」と位置づけられ、
中国人同士でも、差別というか、蔑視があるのだ。
友人の中国人や先生たちは「ごめんね、あんな失礼なこと言って、
彼らは農民だから文化がないの・・・」とよく失礼な?フォローをしていた。


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