瀋陽へ留学

さて、学費や寮費についてお話ししよう。

学費や寮費は、各学校差があるようだ。
瀋陽の大学の学費は一年で1500ドル、半期で750ドルだったが、
北京の学校では半年で1300ドル、一年で2500ドルだったから
ほぼ倍であるし、寮費も北京は瀋陽の約2倍だった。

寮費も部屋のタイプによって異なっている。
瀋陽で私のいた学校は寮が2棟あり、新楼、旧楼と呼ばれていた。
新楼は七階建ての建物で、各階に12部屋あったような気がする。
バストイレがついている部屋とバストイレなしの部屋の2タイプあり、
バストイレ付の部屋は8畳ほどで相部屋なら一人3.5ドル、
一人で住むと7ドル。
バストイレなしの部屋は10畳ほどで相部屋なら3ドル、
一人で住むと6ドルだったが、
このタイプの部屋に一人で住んでいる人はいなかった。

ちなみに北京では、留学生用のマンションだったので、
掃除やベッドメーキングもついて、一日9ドルだった(と思う)。
寮もピンキリらしいが、一番安くて(シャワー・トイレなしの相部屋)
5ドルとか、だったらしい。
とにかく北京では物価や部屋代がとても高いのだ。

留学生の寮やマンションには、
ベッド・机・いす・冷蔵庫・本棚・クローゼットが
備え付けてあり、布団も一式あって、着いたその日から
生活できるようになっている。

瀋陽の寮には、各階に温水器と洗濯機、共用のトイレがあり、
3階に共用シャワー、5階に共用キッチンがあった。

この共用のキッチンは殆ど使用したことがない。
というのも、私がいた頃の寮は、韓国人留学生達が専用のお手伝いさんを
雇っていて、朝10時から夕方6時ころまで、台所は彼女に
ほぼ占有されていたからである。
午前中は10時頃から昼食の準備をして、昼食後に後片付けをして、
午後は買出しにでかけ、午後4時ころから夕食の準備に入る。
そのため、3つあるガスコンロは常に彼女によって占有されており、
ほかの留学生は殆ど使用できない状態だった。
留学生の分際でお手伝いさん?と驚いたが、
私の学校にいた韓国人たちは世界中で一番美味しい料理は
韓国料理で、3度の食事でキムチを食べないと
食事をした気がしない、と豪語するほどの韓国料理好きだった。

ちなみに、韓国ではイタリアンを食べようが、フレンチを食べようが、
日本食であろうが、かならずキムチが付いてくる、と言っていた。
瀋陽にあった韓国系のカフェで、ピザやパスタを注文しても
キムチが無料で付いてきていたので、本当にそうなのだと思う。

東北地方には朝鮮族が多かったので、彼らはこの朝鮮族のおばさんを
雇って韓国料理を作ってもらっていたのだ。
彼らに言わせると、10人ほどで雇えば、一食10元程度で済むのだそうだ。
瀋陽にはコリアンタウンがあるが、そこまでタクシーに乗って食事に
行くと一人少なくとも50元はかかる。
それを考えると、えーい、お手伝いさんを雇ってしまえ、となるらしい。
私の斜め向いに韓国人のボス的存在であった留学生の部屋があり、
そこで集まって食事をしていたのだが、毎日、廊下まで
美味しそうな匂いが漂っていて、とても美味しそうだった。

寮といえば、日本では女子寮・男子寮と分かれていることが多いと思うが、
ここの留学生寮は、男女ごちゃ混ぜに暮らしていた。
寮が2棟あるのだから男女分ければ良いと思うのだが、
棟どころか階も分けてなく、私の隣は日本人の男の子だったし、
向いは韓国人の男の子たちで、最初はかなり驚いた。
部屋のドアも薄く、ノブの真ん中を押してかぎをかけるタイプの
言ってしまえばトイレのドアのようなチャチなドアで、
こんなんで安全なんだろうか・・・と思ったが、
気になったのは最初だけで、治安の悪い瀋陽においては
留学生および外国人講師しかいない寮内はとっても
どこよりも安全な場所に感じられたし、実際、とても安全であった。

寮には門限があり、週末は11時半、平日は10時半だった。
しかし大学そのものの正門の門限が10時なので、
学生寮の門限だけが遅くても、あまり意味がないのだ。
遅くに帰ってくると、正門脇の門衛さんの詰め所に行って
寝ている彼らを起こして正門を開けてもらわないといけない。
この時は、わざとたどたどしく中国語を話して、
「アタシは留学生」ってことをアピールしないと
「今、何時だと思ってるんだ???」と、怒鳴られたり、
開けて貰えない事もあるらしいが、留学生だと分かると、
学生寮の門限が遅いことを知っているだけに
快く開けてくれる。

中国人の大学生たちはこういった留学生の特別待遇が気に
いらないようだったが、彼らの十倍以上の寮費を払っているのだから、
そのくらいは、大目に見て欲しいものである。
ちなみに、一般の中国人大学生の寮は当時、
8人部屋でウナギの寝床のようだった。
細長い部屋の両脇に2段ベッドが4つならんでおり、
真ん中のスペースに共有のテーブルが一つ、
部屋の照明は暗く、ベッドの上のみが自分のスペースなのである。
学習机もないので、勉強は空いてる教室か図書館で行う。
テレビも図書館のフロアにあるだけで、寮にはテレビは一切ない。
寮の廊下やベッドの手すりには洗濯物が干してあり、
廊下のガラスは所々割れているし、階段には照明がないため
夜はとても危ないのだ。
私はこの環境だったら、3日ともたないだろう・・・と思ったものである。


中国人寮の門限は9時45分で消灯が10時頃だった気がする。
最初、留学生寮の門限が10時半と聞いて、高校生じゃないんだからと
不服だったが、瀋陽の町は夜9時を過ぎると人通りも殆どなくなり、
街路も暗く、治安も悪いので、10時半でも十分くらいだった。


当時はそれほどとは思わなかったが、今考えると、瀋陽の治安はかなり
悪かったように思う。
中国の中で広東・北京についでワースト3位とか北京を抜いてワースト
2位になったとかいう話を聞くほどだったので、中国基準で考えても治安が
悪い場所だったらしい。
他に比較対象がないので「中国って治安悪いなぁ〜」と思っていたが、
瀋陽が特に悪かっただけである。

瀋陽には西塔というコリアンタウンがあるのだが、そこではロシア製の
トカレフがなんと、800元で売っているという噂であった。
(この話は以前もしたが)
当時、最も安い携帯電話が1000元ほどだったので、
最廉価の携帯電話より安いトカレフって何?と驚愕したが、
実際にトカレフを持ってる人は見たことがない。
そういった銃は品質が悪いので暴発事故が多発しており、
あまり購入する人がいないんだそうだ。

この西塔では何年か前まで、ほぼ毎晩、殺人事件があったと聞く。
最近は減った・・・といったが、それでも強盗・殺人は日常茶飯事だそうだ。

すごく不思議なのだが、中国では新聞やニュースなどで○○で強盗殺人事件とか
▲▲で連続殺人事件、とか、そういった報道は殆ど見ないのだ。
国が広すぎるから報道しきれないだろうし、事件も頻発しているだけに
いちいち報道しないらしい。
が、▲▲連続殺人事件の犯人を逮捕!!!などという
大々的なニュースを見ると、たのむ、せめて事件が発生した時点で
その該当地域でくらい、報道してくれ!と思わなくもない。
そんな事件が身近で起こっていても、報道されなければ知らないので、
犯人が逃走中だということももちろん知らない。
普段と同じように街をぶらぶらして、バスにも乗るし、西塔あたりで
食事をして、サウナに行ったりもする。

報道して、いたずらに国民の不安を煽らないように、と誰かが言っていたが、
むむむ・・・そういう問題じゃないだろう。
事件があったことを知っていると知らないでは、心の準備も違うというもの。
新聞には、××事件の犯人を逮捕した、などといった警察や公安の功績や、
落とした携帯電話が持ち主に戻ってきたという美談も写真入りで大々的に
掲載されたりしている。 (つづく)

中国ビザ 航空券 港華