寧夏・内蒙古 編

沙坡頭

もう一か所、銀川から日帰りで訪れた少々興味深い場所は、銀川からは
15kmほど南西にある沙坡頭旅遊区である。ここは、黄河が大きく湾曲
している場所であり、そのために堆積した砂が砂丘を造っている地形が
特徴的である。寧夏交通旅遊図には、沙坡頭は「中国AAAA級旅遊区」や
「国家級自然保護区」として紹介されている。
沙坡頭へは、興慶区の南門広場近くのバス停から、中衛行きのバスに乗
る。中衛までは高速道路並みの立派な道路が開通していて、快車(急行)
に乗れば2時間半ほどだ。この道路のお陰で、銀川からの日帰りが可能
なのであろうが、それでも距離を考えると朝はかなり早く出発しなけれ
ばならない。
中衛のバスターミナルに着くと、道路を隔てた向かいの近距離専用のバ
ス駅から沙坡頭行きのバスが、約30分毎に出ている。中衛からは、距
離にすると17、kmといった所だが、恐ろしく田舎の道を走るので40
分ほどかかった。
ただ、この田舎道は、黄河からひいてきた水路に沿って黄河と同じ色を
した土壁の家々が並び、そこここに豊かな緑の木々が木陰を作っている
ような美しい田舎だったので、とても楽しい40分間だった。真夏でも
あり、少年たちがあちらこちらの水路で水浴びをしていた。自分が育っ
た環境とは似ても似つかないが、なぜか懐かしい気がする、いわゆる
“原風景”というやつだ。沙坡頭周辺の地域は、緑豊かな地域だと感じ
たが、これは近年の緑化の賜物かもしれない。

もともと沙坡頭は、その砂丘で有名なのである。沙坡頭旅游区に着くと、
まず目に入るのが、駱駝だ。黄河を眺めながら駱駝の背に揺られて砂丘
を行くというのも、ここのアトラクションのひとつだ。ここの砂丘は、
黄河の土手でもあり、場所によって緩やかだったり急だったりするが、
高いところまで上り詰めると、風紋のその先に黄河がゆったりと流れて
いて壮観である。
傾斜が急なところでは、“砂丘滑り”も人気だ。そして、ここ沙坡頭で
一番人気のアトラクションが、羊皮筏子(ヤンピーファーズ)といわれ
る筏(いかだ)での黄河下りだ。
羊皮筏子は、羊の皮袋に空気を入れて作った浮き袋を15、6個、竹で
編んだ格子の下に縛りつけて浮くようにした筏で、かつては黄河中上流
域の大事な交通・運搬手段であった。今となっては実用性を失い観光用
の物でしかないが、それでもその新しい役割をきっちりと果たしている。
河岸から上流を眺めると5?6人の観光客を乗せた羊皮筏子がひっきり
なしに流れてくる。船頭さんが櫂で方向を取るだけで流れにまかせて下
ってくるのでスピードはきわめてゆっくりだ。
船着場で近づいて羊皮筏子をよく見ると、ひとつひとつの皮袋がリアル
に羊の格好をしている。首と四本の脚の部分をひもで縛って、風船のよ
うに膨らませた感じである。もちろん縫い合わせて羊の格好にした物で
はない。ものの本によると、羊の頭を切った後、首の部分から肉や骨を
全部取り出してしまう「渾脱」という方法で作った羊の皮の袋に空気を
入れたものらしい。こうすれば縫い目のない袋が出来上がる。見た目は
少々グロテスクだが、軽くて耐久力もある。より大型のもので牛皮筏子
というのがあるらしい。これは実物を見たことはないが、想像にはたや
すい。

なお、沙坡頭観光は銀川から日帰りで十分だが、中衛で一泊すると中衛
高廟なども観光できる。

銀川にはちょうど一週間滞在した。美味い「羊羔肉」と別れを告げるの
は惜しいが、そろそろ次の目的地、内蒙古自治区・包頭に向かうことに
する
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