寧夏・内蒙古 編

包頭へ


包頭行きバスは、銀川興慶区の北のはずれにある旅游汽車駅を予定通りの
6時20分に出発。どうやら我々が乗ったのは慢車(鈍行)だったようで、
包頭までの約600kmを、12時間ほどかけて走った。

この12時間の間、バスの中では1枚のCDが繰り返し流れていた。私は音
楽について何の造詣も持たないが、明らかに新彊でよく耳にした曲調、あ
るいはウイグル料理屋でよく流れていそうな曲調の曲だと思った。もっと
も繰り返し聴いていると、すべての曲がウイグル調というわけでもなさそ
うだし、歌詞も中国語である。「2002年的第一場雪?♪」はまだよい
が「サラーム毛主席、ライライライ?♪(「サラーム」はウイグル語で「
敬意を表す」の意)」となると、いったい何者?と妙な興味がわいてくる。
しかもその特徴のあるハスキーな歌声はとても耳に心地よいのだ。
調査(?)の結果、後日その実態がはっきりした。そのCDアルバムは“刀
郎”という歌手の『2002年的第一場雪』というアルバムだ。ウイグル
音楽を基調としているが、“刀郎”自身は成都出身の華人である。十数年
前に愛する人を追って新彊入りし、当地の音楽の影響を強く受けたという
ことだ。愛する人を追って…といっても、本人はおおよそ情熱とか、ロマ
ンスとは無縁に見える、いつもキャップをかぶったちょっとダサい兄ちゃ
んだ。
『2002年的第一場雪』は2004年1月にリリースされて、春頃から
各地でヒットを飛ばしている。聞くところによると、北京での映画『十面
埋伏(邦題:Lovers)』の記者発表会の際、出演者に加えて、数人の有名
歌手が発表会に花を添えるため歌を歌ったそうだ。その発表会を通して最
も盛り上がったのが、当時北京では無名だった“刀郎”のアルバム名と同
じ名のヒット曲『2002年的第一場雪』だったとか。多くの記者たちは、
映画より彼に興味を持ったという。結局270万枚の大ヒットを飛ばし、
一躍時の人となった。
中国人は鼻歌好きである。道を歩きながら、時にはバスに乗りながらでも
歌っている。昨年の11月末北京で初雪が降った時には、道行く人の何人
もが「2004年的第一場雪♪比以往時候来得更一些?♪」と口ずさんで
いるのを聞いた。
ちなみに、刀郎は盗版(海賊版)対策にも随分腐心し、その封じ込めにも
ある程度成功したようで、昨今の盗版問題にも一石を投じた先鋭的なアー
ティストでもあるらしい。

また話はそれてしまったが、午後7時前頃バスは包頭東駅(鉄道駅)の近
くの長距離バスターミナルに到着し、忘れ難い12時間のバスの旅はよう
やく終わった。疲れ果てた我々はそのまま駅近くで宿を探して、やっと落
ち着く事ができた。

包頭といえば鉄鋼業の町で、街の西の外れに巨大な鉄鋼所がある。市街地
は西側の昆都侖区と東側の東河区に大きく分かれていて、我々が落ち着い
たのは東河区である。包頭では市内にこれといって見るべき物がなく、郊
外での観光が中心になるので、バス駅に近いことも宿選びのポイントとな
ったのである。

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