寧夏・内蒙古 編

フホホトへ

かなり盛りだくさんだった包頭から、次の目的地フホホトへも、やはり
バスでの移動である。直行バスに乗り、快適な高速道路の旅はたった
1時間半で終わった。
フホホトは内蒙古自治区の区都であり、さすがに人の集まる都会なわけ
で、久しぶりに宿探しに苦労することになった。たまたま何やら医療関
係の会議があるというので、バス駅近くのホテルはどこも満室だった。
ちょっと焦ったが、バス駅から少し離れた所にどうにか部屋が見つかっ
た。

フホホトからは、市内にある大召・席力図召・金剛座舎利宝塔や南郊の
昭君墓、そして少し遠出して日帰りでシラムレン(希拉穆仁)の草原に
行った。市内の名所は、ガイドブック等に載っているような所ばかりな
ので端折るとして、今回の旅の最後にちょっとがっかりのシラムレンを
紹介しようと思う。




「ちょっとがっかり」などといったが、フホホトから日帰りで8月中
旬にきれいな草原に行き着くわけがないので、予想通りでもある。
そして、我々の計画の失敗でもある。
もともと内蒙古自治区でももっと北のホロンバイル(呼倫貝爾)の草
原でナダム祭を見ようと計画していたのだが、既に時遅く間に合わな
かったのでナダムは諦めて今回のルートにしたという経緯がある。
とはいうものの、内蒙古に来て草原に行かずにはおれない。
が、季節外れにわざわざ草原ツアーに参加するというのも馬鹿らしい。
とりあえず自力で手っ取り早くいける草原として選んだのが、シラム
レンだったのだ。

シラムレンへは、朝8時の召河行きのバスに乗る。
他にも1時間おきに2・3本バスはあったようだ。途中タイヤ交換で
予定より少し遅れたものの10時半頃にはシラムレンに到着。
道路わきに巨大な駐車場と数え切れないほどの宿泊用のゲルが密集し
ていて、それが草原の旅遊区の入り口でもある。
草原はなだらかにうねりながらどこまでも奥に続いていて、所々に馬
のふみ跡が細く長くつながっているのが見える。
バスが駐車場に入り、我々を含め何組かの観光客が出て行くと、客引
きが群がってくる。
馬に乗れだの、昼食を食べろだの、泊まっていけだの…兎に角うるさ
い。
しかも、周りはゴミが風に舞っている始末。そのごみの量が半端でな
く、あたかもゴミ箱をひっくり返した直後のよう。

なんだか、草原の夢はこの段階で大きく打ち破られてしまった。
何をするでもなく、とりあえず、周りの様子を見に歩き出す事にした。
ここでは、馬に乗って草原のいくつかのポイントを回るのが定番のよ
うだ。グループごとに観光客が馬の背に揺られて行く。
中には、要領が悪いのか、それとも馬の機嫌が悪かったのか馬に振り
落とされてしまった人もいた。それでも、都会からきた人たちにとっ
ては、乗馬を楽しんで草原を満喫するというのは、得難い経験であり、
思い思いに楽しんでいるようだった。

さほどこの場所に魅力を感じなかった我々は、帰りのバスが出る2時
までの短い間、せめて、自分たちなりの方法で楽しむことを選んだ。
我々は結局、四方に人工物の見えないところまで行き草原を堪能する
事にした。
さすがに草原だけあって、近くに見えていても歩くとかなり遠い。
途中、羊を放牧しているオヤジがいたり、買出しに行った帰りなのか
荷物を満載したバイクに(もちろん馬ではない!)2人乗りの地元の
カップルが通り過ぎたり…と、少しだけこの土地の生活感を感じなが
ら歩くのも、また楽しい。
「四方に人工物の見えないところ」にようやくたどり着き、鉄木真つ
まりチンギスハンが馬に乗って草原を駆け巡っている場面を想像しな
がら大きく深呼吸をしたとき、ようやく多少の満足感を得た。
というのも、今回の旅のお供は井上靖の『蒼き狼』だったからだ。
私としては無理にでも草原を満喫しなければ気がすまなかったのだ。

というわけで、予定よりちょっと長居して午後3時のバスでフホホト
に戻ってきた。ちょっとがっかりのシラムレン日帰り旅行は、ちょっ
と無理やりだが満足のうちに終わらせることができた。
ただ、来年こそはホロンバイルに絶対行こう、という目標もできた。

いつものことだが、たった3つの街を旅行するのに2週間以上もの時
間を掛けてしまった。
北京への帰路ものんびり長距離バスの旅だ。
途中高速道路が開通していない部分もあったので、思いのほか時間が
かかった。10時間ほどだろうか。八達嶺高速で渋滞につかまらなけ
れば、あと1時間は早く北京に着いていたかもしれない。

寧夏内蒙古 」編は今回で終了です



中国ビザ 航空券 港華