編集後記から

10年前にメルマガに掲載したものです
遅ればせながら中国残留孤児として新中国で生き抜いた父と、
その父から自分に繋がる歴史をたどった娘のノンフィクション
タイトル あの戦争から遠く離れて
(情報センター出版局 城戸久枝さん著)
を読みました。

第一部
中国残留孤児であった著者の父親の物語。

東北の貧しい農村に捨てられながら、養母の愛を受け、
困難な環境でも努力し、日本を意識する父。
帰国のために、つてのないまま赤十字へ数百通の手紙を書き続け、
ついに帰国を果たす。
1970年に帰国後も立派に自立した父親。

第二部
著者が中国留学。
父親の親戚や友人との再会、交流、ふれあいが丹念に描きながら、
父親や満州軍属だった祖父の足跡を辿っていく 。

著者は、異文化と衝突しながら父の半生と向き合うことで初めて、
家族や絆、父の日本への思いを理解したと書いています。

政治や歴史を前面に出したり、戦争の悲惨を訴えているわけでもありません。
証言を積み上げる手法で、生きた日中現代史と生身の人間を描きだし
そこに、もつれた糸を解きほぐす可能性を見い出そうとしています

また、満州国の軍人だった祖父についても、
資料を丹念に読みながらその姿を追い、
はからずも満州というものを浮き彫りにしていて
力強いノンフィクションになっています

それにしても、子供は自分の父親のことをどれだけ知っているものでしょう。
個人的にも年の離れた父親を持ち、
中国にもいたというその青春時代をほとんど知ることなく
確執を解消しきれずに送ってしまった身として、
この父娘の絆がうらやましくも思えました。


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