帰国後奮闘編

他県ではどうか知らないが、私の地元では、まれに
警察の通訳研修会などもあって、他言語の通訳さんや、関連部署の
刑事さんたちと交流を深めたりする機会もある。
研修会終了後、有志・有料でパーティーなどが催され、
いろいろな言語の通訳さんが一同に会して、情報交換したりして、
普段、なかなか接する事のできない方々と知り合いになれたりして
なかなか楽しかったりするが、警察での取調べ通訳は、犯罪者を
相手にするので、正直言って、あまり気分が良くないものである。

日常生活の中では、取調べ室や面会室に入る機会など、
そうそうないし、手錠・腰紐をした人を間近というか、
めちゃめちゃ至近距離で接する機会など、ほとんどないだろう。

狭?い取調べ室の中には、事務机が一つ、窓には鉄格子、
窓際に椅子が一つ(被疑者用)、ドア側に刑事用の椅子が一つ、
よく、ドラマでみかける風景、そのものである。
(電灯がなく、スタンドを使っている取調室は見たことがないが)
そして、二人の真ん中に私が座る。
壁には鏡があり(ない部屋もあるが)、
これはマジックミラーになっていて、
外から、中の様子が見えるようになっているらしい。
最初のころ、それを知らなかった私は、
被疑者を留置所から出してくる間など、
一人で手持ちぶさたなので、よくその鏡で、
髪型や化粧をチェックしていたが、
向こう側にいた刑事さんもびっくり!だったんだろうな・・・と、
今、考えると恥ずかしい。

ドラマではよく、
刑事さんが「カツ丼、食うか?」みたいなことを言っているが、
被疑者に食べ物を与えることは禁止されているようで、
実際は、カツ丼どころか、
飴やガムすら、あげることができない。
もし通訳している最中に、咳が出てしまったり、ノドがイガイガして
必要に迫られてノド飴を食べる場合などは、刑事さんには差し上げても、
被疑者には上げることが禁止されているので、
「ごめんね、規則であげられないの・・・」といって、
食べるしかない。


被疑者が男性だったりすると、拘留中に女性と接する機会がないせいか、
なめまわすように、ジロジロと見られたりして、
刑事さんが隣にいるから良いようなものの、
目がギラギラしていたりして、と???っても怖い。
通訳者の服装なども、つかまれたり引っ張られたりする恐れがあるから、と
スカーフやネックレス、大きめのイヤリングなどは禁止で、被疑者が
男性の場合は肌の露出を抑えるとか、一応、アウトラインがあるようだ。

逮捕の容疑は、不法入国、不法滞在、不法就労、資格外活動、
窃盗、住居侵入、強盗傷害、などさまざまだが、大概、逮捕された人は、
これらがいくつか該当するパターンが多いように思う。

窃盗未遂で逮捕したら、不法入国で不法就労だった、とか、
不法滞在で逮捕したら、違法業務に従事し、偽装結婚だった、
不法就労で逮捕したら、偽造パスポートを所有していた、とか、
そんな感じが多い。
そして取り調べになると、明らかにウソというか、
みんな同じような言い訳をするのだ。
母が病気、父が寝たきり、両親を事故でなくし、幼い兄弟を養っているとか、
離婚して子供を養うために、仕方なく出稼ぎに来たとか、
非常にウソっぽく、突っ込みどころ満載なのだが、
本人は至って真面目に、それはそれは悲しげに話すのだ。
一回、あまりに矛盾しているので、中国語で
「ん?お父さん、亡くなったんじゃなかったっけ?」と突っ込んだら、
舌をペロっと出して、「ホントは生きてるけど、刑事には黙っててよ」と
言っていた。
とりあえず、同情を引く為には、何でもアリのようだ。
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