ハルビン、最初の印象 3月17日

日本は、もう暖かくなりつつあるのでしょう。ハルビンは、まだ冬です。でも零下を切る日もでてきたので、それほど寒くはありません。ハルビンに来て、3週間くらいたちました。まあ、ぼちぼちやっていますが、電話が不便なのと、言葉にまだ慣れません。
日本のハルビン人の先生は、今が一番汚い季節だといっていましたが、そういう次元ではないような気がします。確かにかちかちに凍った、真っ黒な雪があちこちに山積みになっているし、昼間はぬかるんで、靴がとても汚くなります。木々もまだ芽吹いていませんから、景色は寒々としています。でもこの季節がすぎればきれいになるのかというと、疑問に思います。歩きながら痰を吐く人の多いこと、ゴミは平気でかたわらに捨てる、マンホールや公衆電話はくずやに売れるのであちこちなくなっている、壊れかけた建物ではとても買う気になれない食品を売っているし、壁は携帯の電話番号の落書きだらけです。バスやタクシーも、洗車する習慣がないのか、汚くて外が見えないほどです。
なんでこんなに欠点を並べるのかというと、たぶんここでの生活になれたら、当たり前になって、何とも思わなくなるからです。かえってよい点が次第に見えてくるようになると思うので、それまでは我慢して悪いところを聞いてください。
本屋さんでは、買う人よりも立ち読みの方が多い。それは日本でも一緒ですが、こちらではなんと、いすが用意されています。座ってゆっくり読むことができます。そのおかげで、本が汚い。カバーが破れていたり、折り目がついていたり。
交通法規は、もうめちゃくちゃです。まず信号はほとんどありません。「制限速度30キロ」とかありますが、守っている人はいません。日本にないもので、「驢馬立ち入り禁止」マークがあります。やはり守りません。けれどバスやタクシーがものすごいスピードで通り過ぎる一方、馬や驢馬に荷台をつけ
てゆっくり進んでいく人たちもいますから、暗黙の了解というか、なにか人々の間に規律みたいなものがあるのでしょう。事故は少ないようです。
こちらの交通手段は、公共バス、空調付き公共バス、タクシー、ミニバスなどがあります。公共バスは、窓が割れていたり閉まらなかったりで、とても寒い。だから、多くの人はもう1元はらって空調付きを選びます。確かに快適です。タクシーは扉の壊れているものが多く、開けっ放しで走っている車もあります。そういうタクシーに乗ると、寒いので乗っている間中扉を内側に押さえていなければならず、目的地に着く頃には、手がしびれています。
日本にないのはミニバスでしょう。人の多いところにずっと停車して、大声で呼び声をあげながら、客がいっぱいになるのを待ちます。満員にならないと出発しないので、急いでいるときは使えません。いっぱいになると出発、中の人がお金を集めに来て、どこに行きたいのか聞いてきます。降りたいところでおろしてくれるのです。便利といえば便利ですが、問題は運転の荒さです。すごいスピードで、突っ走ります。時には歩道にも入りますが、こちらでは車が優先なのでクラクションがなると、人々は自動的に道をあけます。前でのろのろ走っている車を見ると、クラクションをならしっぱなしにして、さらに窓から手を出して、車体をばんばんたたきます。ぶつかりそうになると、急にハンドルを切るので、揺れるどころではありません。マンホールがなかったり、道に穴があいていたりするので、そういう箇所にさしかかると体が中を浮きます。酔うのではないかと心配していましたが、ジェットコースターより遙かにスリルがあるので、楽しいくらいです。ジェットコースターに飽きてしまった人、おもしろい乗り物を探している人には、迷わずミニバスに乗ることを勧めます。
歩いているとき、また店内にいるとき、こちらの人たちは手を使って人をどかします。最初は、何か用があるのかと思いました。あと、平気でぶつかってきます。のんびりレジに並んでいると、ちょっとした隙間に割り込みが入ります。あざやかです。エスカレーターでは、右に寄ったり左に寄ったりして、じゃまにならないような、そんなマナーはいっさいありません。エスカレーターは運んでくれるものだから、登ることもしません。
こちらでは100元札というと、大金なので、買い物するときに渡すといやな顔をされます。それから偽札が一番多いのがこの100元札なので、渡すとまず、電灯や空にかざして、すかしがあるかどうか確認します。大型スーパーの場合、偽札探査機にかけられることもあります。1500円程度でも、こちらでは本当に大金です。小さな商店の場合、10元(150円)以上のものは、高いとされています。4元のものを買うときでも、10元札を出すといやな顔をされるのですから、100元の時はどれくらいか、みなさん想像がつくと思います。
トイレには紙がありません。それにトイレに紙を流すことはたいてい禁止されています。だからトイレの横には大きなくずかごがあって、使った紙はそこへ入れます。掃除する人がいるところはいいのですが、そうでない場合は目も当てられません。入りきらない紙が散乱し、さらに鍵が壊れているときは、我慢してでてきます。
幸い、宿舎内ではそれほど生活は困難ではありません。トイレに紙を流してもいいし、基本的に自由です。ただ、去年中国人宿舎(中国の大学生は、寮生活が必須です。たいてい8人部屋です)で電熱ヒーターを使っていて火事が起きたので、それ以来火器類は禁止です。見つかると、没収されます。でも冬は寒いので、こっそり使っている人もいます。
ハルビンが最高に寒くなるのは12月と1月です。こちらへ来たのは2月の末、寒さには強い方ですが、それでも「痛い」と感じました。「寒い」のではなく、「痛い」のです。毎日マイナスの日が続いています。ハルビンに春が来るのはいつなのでしょうか。
それでは、今日のところはここまでにしておきます。
次回は、学校生活や、食生活についてはなしたいと思います。平日は学校のほかに、中国人の家庭教師をつけたり、毎日の予習で手一杯なので、来週末にまたメールを書きます。

★ 後日談

タクシーやバスを掃除しないのは、洗車してもすぐ汚れるからでした。春以降は、キレイな乗り物を見ることができました。それから、中国は日本の都会と比べものにならないほど樹木を植えているので、春以降はやはりキレイになりました。トイレもすっかり免疫がつき、地方のドアなし・穴だけ・ハエだらけのトイレでも、全然なんてことなくなりました。人混みを歩くときは手を使うようになりましたし、割り込みもするようになりました
が、日本での生活が困難になるので、あまり同化しない方がいいでしょう。

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