北京で仕事始めました

北京で就職して、3か月経った。
働き出してから色々な人に「どうやって見つけたの?すごーい!」といわれる。
それは何故って、今、北京の外国人はかなりの就職難だからである。
北京には留学生も多く、それに比例して”人材”も多いらしい。
結局、北京で見つからずに上海や香港、または地方都市へ流れて行った
友人も多い。
が、しかーし、贅沢を言わなければあるのだ!
日本並みのお給料を求めたら、えらく大変だけど、それなりの生活で、
日本円での貯蓄は考えない、というのであれば無くも無い。
腐っても日本人なんだから、安い、安いと言っても周囲の中国人の
何倍も貰える。
しかし日本円に換算すると、余裕で父の扶養家族になれるくらいの
額になってしまうのが、悲しい現実である。
今の待遇を日本で働く日本人と比較するか、13億の中国人と比較するか、
比較の差で気分が全然変わってくるから不思議なものだ。
私は収入は二の次で、「これも経験!」と、仕事内容で決めたので、
深センでプール付きの豪華マンションで暮らすフランス人の友人に、
「君は何でそんな給料で働いてるんだ、家賃も払えないじゃないか・・・」
と真顔で心配された。
放っといてくれ、MBAを持ってる君とは違うんだ・・・言ったところで始らない。
どうやら私のお給料では彼のマンション代も出ないようだ。
でも、今のお給料でも、それなりに快適で清潔な自称豪華マンション?に住み、
毎朝タクシーで会社に乗り付けるくらいの贅沢はできる。
帰りは1元のバスで帰るあたり、こっちで暮らす駐在員さん方とは大きな差だが、
衣食住ともに、一般の中国人と比べたら、かなり贅沢をしているつもりである。


私が今の会社に就職したのは、偶然以外ナニモノでもない。
たまたま知人から「もし興味があったら・・・」と紹介されて、
完全帰国を目前に控えていて、荷物もあらかた日本へ送った後だったが、
仕事内容が面白そうだったので、ま、せっかくだから行ってみよう、
と面接に行ったのが事の始まりだった。
元々、中国で働くつもりは皆無、もちろんリクルートスーツなどあるハズがない。
わざわざ買うのもバカらしいので、電話で「まともな服がないのですが・・・」と
お伺いをたてたら、「普段着でどうぞ・・・」と温かいお言葉。
それに思いっきり甘えることにしてGパンとポロシャツで面接に行った。
何ヶ月ぶりかに化粧をしたら、それだけでちゃんと身だしなみを整えた
つもりになったあたり、現時点でかなり日本での社会復帰は困難かもしれない。
面接では、お互いの需要と供給が合ったらしく、あっさり決まった。
北京で働く日本人の相場を全く知らなかったので、提示された待遇を
そのまま飲むことにした。
もちろん多くはないが、経験の無さを考えれば、まあまあ、と言っておこう。
留学生だった頃の生活レベルを考えれば、生活レベルにはかなりの向上が
見られるので、とりあえず待遇に不満はない。
紹介してくれた知人に後から聞いた話によると、先方の要求は
「とにかく元気で明るい人」だったらしい。
条件はそれだけだったのか・・・とちょっと複雑な気分になってみた。


私が勤務する会社は、欧米人と日本人のご夫婦が経営している翻訳会社で、
私の主な仕事は、中国語の自動車関係のニュースを日本語に翻訳して、
メールで送信すること。
時々、レストランのメニューの翻訳や、ホテル客用の指南書など
単発の翻訳も入るが、何が難しいって、メニューの翻訳はえらく難しい。
そのまま正直に訳すと、とても食欲をそそらないような食材も沢山ある。
また、その辺のレストランではザリガニを「ロブスター」と堂々と書いていたり
するため、このレストランはちゃんとロブスターを出すのだろうか・・・と
いらぬ心配をしてしまった。
以前、山盛りのザリガニが出てきて唖然した記憶がよみがえり、
日本から旅行に来て、ロブスターのつもりで注文して、ザリガニが出て来たら
ショックだろうな・・・と考えると、つい正直に「ザリガニ」と
書いてあげた方が親切な気がしなくもない。
そのレストランがちゃんとロブスターを使っていることを祈りつつ、
うーん、小ロブスターなんてどう?と自問自答しながらも、
やはりロブスターにしておくことにした。
そのレストランはキノコ料理が有名らしく、日本語では見た事も聞いたことも
ないようなキノコの名前がが沢山出てきて、しばし硬直する。
中国語の説明の下に英語訳もあったため、よしよし、これを参考に!と思ったら、
英語訳は全部「マッシュルーム」となっていた。まったく、使えない!
だからと言ってマッシュルームと訳すわけにいかない所が、日本語の
難しさである。

さて、話がそれたが、私は一応、唯一の日本人スタッフとして日系企業
窓口的なこともするが、殆ど社内でパソコンと向き合っている日々である。
私以外のスタッフは全員中国人なので、当初は、聴力も口語力もガンガン
上がるに違いない!と信じて疑わなかったが、黙々とパソコンに向かっている
ので、口語力は却って落ちたような気がする。
そして、閲読の能力だけが上がっていくのかもしれない。
会社では、社長夫妻も大事にしてくれ、中国人スタッフは親切だし、
かなり恵まれた職場環境だと思う。
ボスが外国人なだけに、システムも日本的な部分と欧米的な部分が
ミックスされていて、中国にありがちな”不合理”なものはない。
訳の分からない中国人ボスに振りまわされている友人を見るにつけ、
自分がいかに恵まれているかをかみしめている。
私は以前、日本で何年か働いていたが、それに比べれば、
残業も少ないし、仕事もキツくない。
ボスは、「無理はしないで下さい」が口グセなので、言ってしまえば
楽をさせてもらっているような気がする。
辞書を片手にピコピコと翻訳しているのだが、いかんせん私は自動車に
関する知識がえっらく乏しい。
専門辞書で単語を引いたところで、日本語で何を指しているのかが
わからない。ふーん、こんな日本語、あったのね・・・と感心している
場合ではないのである。
そして興味がないだけに、部品や車種も覚えられない。
どうせ翻訳するなら、興味のあるジャンルにすれば良かったかも・・・と
一瞬思うが、この際、そんな贅沢は言っていられない。
翻訳の経験が皆無なだけに、ジャンルなんて選べる立場ではないのだ。
それに、対象がニュースなだけに、内容は毎日、目新しい話題で、
時々、おいおいっ、今までこーんな無茶な政策していたんかい?と思うような、
思わず笑ってしまうようなニュースもあるし、まぁ、面白い、といえるだろう。
トータルで考えれば、かなり満足、と言える中国での社会人ライフである。


http://homepage3.nifty.com/kamakurakoka/