住まい編その1

血液検査の手帳は無かったが、日本でのZビザ申請は滞りなく終り、順調にZビザをゲットして予定通り中国へ戻ることができた。ついに夢のZビザを手に入れた!これでいつでも帰国できる、と思うとそれだけで心にゆとりができるものである。
北京に戻ってすぐに会社近くの中国人用の普通のマンションに引っ越した。中国は外国人の住居制限があるため、そこに住むのはもちろん違法だが、そもそも私の居留証は天津なので、北京に住むこと自体すでに違法なのだ。しかし、会社のオフィスがあるビルは外国人だらけで敷地内に外国人用の幼稚園もあるが、ここも政府の許可がないと聞いて、思わず笑ってしまった。元々、本音と建前がえらく違う国だが、ここがダメなら一体どこなら良いのだろう。中国にいる外国人の何割が合法エリアに住んでいるのか、気になる所である。北京にオフィスを合法に構えているのに、社長夫妻の住所と居留証も天津だし、本当に不可思議な国だ、としみじみ思う。
余談だが、ZとXビザの保有者は入国後に居留証を申請しなければならない。居留証を持たないと不法滞在になるし、期限切れも不法滞在である。中国政府は不法滞在者に1日500元=約8000円の罰金を課している。北京のレストランのウエイトレスや寮母さんの月給は500元が相場なので、外国人限定の罰金なだけに、恐ろしく高い料金設定である。私はこの罰金制度を聞いた時、本気で外務省に投書をしようと思ったが、残念ながら、まだ実行には移していない。日本でも不法滞在者に罰金を課せば、財政赤字が緩和され、不法滞在者も減るに違いない!これは名案である。そして何と、中国では罰金も値切れるのだ!これには驚いた。以前、韓国人の友人が居留証の延長手続きを忘れてしまい、公安で「そんなに払えない!」とゴネたら、3分の1以下になった実例もある。ちなみに中国にいる韓国人は何でも値切るし、その値切り方もすごい!もちろん日本人だって値切るが、彼らには到底かなわない。北京で誘拐された韓国人の男友達は(本当に3人がかりで誘拐されたのだ!)自分の身代金まで値切ったツワモノである。無事だったから、今でこそ笑い話だが、実は笑えない話だと私は思っている。
さて、話しを戻そう。私が暮らすマンションの外観はお世辞にも豪華でもキレイでもない。引越し直後に遊びに来た韓国人とフランス人は、明らかに不安そうにやってきた。何年も中国で暮らす彼らでさえ、「こんなとこ大丈夫?」と思うレベルらしい。確かに廊下の窓は割れているし階段は暗く薄汚い。が、言わせてもらうと、部屋自体はそれなりに豪華でキレイなのである。大家さんが5年ほどドイツに住んでいた人で、大げさに言えば欧米風。もちろん家賃もそれなりにするが、どこに住んでも違法なら、せめて安全で快適に暮らしたい!やはり外観より内装だろう。
中国で働く外国人は、月4000元以上の収入で納税の対象になる。引いたり、かけたりと面倒な計算式で所得税を算出するらしい。上海に住む友人によると、上海では納税証明がないと銀行口座からお金を引き出せないらしいが、北京の事情はわからない。私はサラリーを満額、全てキャッシュでもらっており、税金なんてすっかり忘れていたが、ある日友人に指摘され、翌日さっそくボスに聞いてみた。どうやら私の所得は対外的に非課税額=4000元以下になっているらしい。実際の給料との差額は住居手当の形を取っているのではないかと思う。そんな訳で、私には納税義務が発生しないので、税金は払っていない。違法と言えば違法、合法と言えば合法の気もする。
こんな事を書くと、まるで中国で履歴詐称に違法居住、挙句に脱税しているみたいだが、いや、確かにどれもあながち間違ってはいないのだが、合法を白、違法を黒とすると、グレーゾーンがやたら広い、中国とはそんな国である。中国に来て以来、初めて「合法エリアの外」に住むことになった。(つづく)
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