住まい編その2

中国に来て以来、初めて「合法エリアの外」に住むことになった。マンション探しにあたり、ボスの知人の不動産屋を紹介してもらい、物件をいくつか見て回った。余談だが、その不動産屋さんは、英字の情報誌にデカデカとご立派な(派手な)広告を出しているが、英語は全く話せないと言う。広告につられて電話をかけ、途方にくれた欧米人が大勢いるに違いない。以前、日本から友人が来た際に足ツボに行くと言うので、日本語の情報誌にこれまた立派な広告を掲載している店に行くと、スタッフは誰一人、日本語が話せなかった。中国には勿論JAROなど無いから、こんなことも往々としてあるのだが、あれだけの広告を出しながら言葉が通じないのは、かなり問題の気がする。
また脱線してしまったが、話しを戻そう。基本的に中国の賃貸マンションは家具付きである。家賃は大家さんが適当に決めているようで、高ければ良いとも限らないし、どれも、帯に短しタスキに・・・といった感である。北京の家賃はおしなべて高く、地方都市の2〜3倍と言っても過言ではない。住まいについて贅沢を言えばきりがないが、会社から近くて交通の便が良く、安全で快適、この条件だけは絶対に譲れない。一応は日本人として最低限の生活水準は保持したいし、中国に我慢しに来た訳ではないから、あまりサバイバルでストイックな生活はごめんである。
首都・北京と言えども、一般家庭のお風呂事情はまだまだのようで、ひどいところはトコトンひどかった。洗面台にシャワーが取りつけてある所、便器をまたいで浴びる所など、バスルーム、ではなく、トイレにシャワーがある、ような所も多い。いくつか見せてもらったが、バスタブが付いているところは皆無で、本当に快適に暮らせるんだろうか・・とブルーな気分になってくる。
私が住むマンションは、不動産屋さんが「とにかくキレイ」と自信満々のイチオシ物件だったが、中国人と日本人の美的感覚の差もイヤというほど思い知らされているし、とかく中国人はオーバートークが多いし、と話し半分以下で聞いていた、が、本当にキレイで一目ボレで即決した。それまで見た中で一番内装がキレイで家具がまとも、そして何よりも、そこは”中国の香り”がしない、中国にいる事を忘れさせてくれる空間で、ソファーに座ると、優雅にティーブレイクって気分になってくる。やはりバスタブはないが、シャワールームも、まぁ合格ラインだ。それに、会社まで2キロ弱で交通の便も良いし、スーパーと銀行、郵便局も近くて立地も申し分なく、なんせ最寄の地下鉄は国貿なのだ。これだけで、ちょっとしたステイタスではないか!外観は小汚いし、通路のガラスは割れていたりするが、このくらいはまぁ、許容範囲である。
賃貸にあたって、敷金・礼金なしで、紹介料が1か月分だった。これは都市によって違うようで、友人によると上海の紹介料は半月分だったそうだ。不動産屋によっても違うのかもしれない。その場で、引越しの日取りと、家賃は現金で3か月ずつ前払い、引っ越す場合は1か月前に知らせる事、など全て口頭で契約終了。契約書はなし。前金を支払うと、大家さんは付箋紙に受け取りのサインをしてくれた。黄色いポストイットに一瞬懐かしさを覚えるが、何かが違う気がする。中国では、外国人にマンションを貸すと税金が高くなるそうだ。大家さんは「誰かに聞かれたら、俺とお前は友達で、ここをタダで借りてると言え」と言う。どうやら中国ではそんな無茶なウソも通るらしい。
外に住むにあたって、大家さんのアタリ・ハズレで生活が左右される。中国製品はやはり壊れ易いから、大家さんと接触する機会も多いのだ。電気製品が故障した時などに迅速に修理を寄越してくれるような人だと特賞の大アタリ!私の大家さんには1等賞くらいあげても良いだろう。
大家である王さんはお腹の出たオヤジ、もとい、恰幅の良いフツーのおじさんで、とてもドイツ語がペラペラのバリバリの企業家には見えない。奥さんはえっらく美人で若かったので一瞬、愛人?と疑ったが、王さんも実はまだ30代だと知った時は衝撃だった。私に彼をおじさん呼ばわりする資格はないではないか・・・。
その老け顔の王さんは、いつも美しい妻とトイ・プードルと共に、光り輝くチェロキーに乗ってやってくる。どうやらこれは彼の3大自慢のようだ。ちなみに中国は犬を飼うのに税金がかかり、登録だけで1匹5000元。北京のウエイトレスさんの月給の10倍?まさにお犬さまである。そのお犬さまの月の諸経費を聞いたら、私の生活費よりも高かった。さっすが王さん、美人の妻とチェロキーはダテじゃない・・・と感心するが、日本人としての最低水準・・のつもりがプードル以下だと知り複雑である。

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