上海出張編その3

そんなアクシンデントもあったが、無事に中国経済の中心、上海へと到着!
2年半以上中国にいるが、実は上海は初めてで気分はオノボリさんである。
地下鉄に乗るために、自販機で切符を買おうと、コインを投入すると、
何度入れても、出てきてしまう。
きっと壊れてるに違いない!と隣の自販機で再度チャレンジ。
が、いくら入れてもダメである。
北京の地下鉄は料金が一律で、自販機などないのだ。
うーん・・・と首をひねっていると、見かねたのか、隣で中国人の
おじさんが何か言っているが、上海語でチンプンカンプンである。
すると訛りのある普通語で「先に料金ボタンを押すんだよ」と教えてくれた。
これではまるで、田舎から出てきたばかりで、初めて自販機に
接した人みたいではないか。
誰も私が”先進国”から来た日本人とは思うまい。
いや、言ったところで、信じてもらえないかもしれない。
上海には訛った普通語を話すヨソモノがいっぱいいるので、外国人であることを
アピールしたい場合は、ちょっと気取って英語なんぞを使ってみないと、
「田舎から出稼ぎに来た無学な人」にしか思われないのだ。

上海には北京にないものが沢山ある。
タクシーに乗っていて、ローソンを見かけた時は、我を忘れて、
「そこで下ろして」と言いそうになったし、モスバーガーを見たときは、
幻覚かと思って、目をこすってみたりもした。
ミスタードーナツを発見した時に至っては感涙にむせび・・・、
はしなかったが、いたく感動して大量に買い込んでしまった。
上海は雨が降っても道が川になったりしないし、街灯も明るい。
なんて素晴らしい場所なのだろう!
よく考えると、真っ暗な夜道や雨で道路が川なるほうが問題なのだが、
北方生活が長い私には、そんなごく普通の事が素晴らしく思えてしまうのだ。
上海に来た最初の頃は、首都なんだから、頑張れー北京!と思ったが、
中国においては、経済の中心と政治の中心といったように、
上海と北京の役割や意義が違うのだ、と実感した。

さて、上海ライフはとても楽しいが、遊びに来ている訳ではないので、
気合を入れて営業活動に励まなければならないのである。

私の会社の営業アプローチ方法は、かなり無茶である。
日系企業の名簿を入手し、関係のありそうな企業をピックアップし、
まず、電話をする。
その名簿には代表者の名前が入っているが、いずれも所長・社長クラスの
ポジションの人なので、おいそれと電話をつないでもらえない事もあるが、
これがまた、ほとんどの場合は意外な程、あっさりつないでもらえるのだ。
一応「どちら様?」と聞かれるが、名乗った所で面識などないから、
「ある会社の日本人です」と、答えになっていないような答え方でも、
「少々お待ちください」と、つないでもらえたりする。
駐在の日本人の名前が分からないときなどは、もっと無茶である。
どの企業も大概、中国人スタッフが電話を取るが、
「私、日本人なんだけど、日本人スタッフいる?ちょっと話がしたいの」と、
下手な中国語で言うと、10中8・9の割合で日本人につないでもらえる。
私の中国語は元々下手だか、そんな時は更に下手にタドタドしく話すのが
コツで、相手も中国語の下手な訳の分からない日本人の相手などしたくない
ようで、さっさと回してくれるのだ。
もし日本で同じように電話をかけたら、間違いなく、そこで切られるだろう。

そして電話を受けた日本人も、怪しい?セールス電話でも、相手が日本人だと
分かると、大概は話を最後まで聞いてくれる。
これも全て、異国における同国人意識からくる安心感と連帯感なのだと思う。
そしてe-mail のアドレスを聞き、翻訳したニュースをお試しで無料購読しても
らい、しばらく経った後で再び電話をして、興味を示してもらえたら、
アポを取りつけて先方に出向いていき、購読申込書にサインをもらう、
という手順である。出向いていくと、当然ビジネスの話もするが、
3分の2以上は雑談で盛り上がる。
先方は殆どオジサマなので、彼らにしてみると、私も一応若い女性に分類
されるので、恐らく、話していて悪い気はしないのだろう、と思わなくもない。
負け惜しみのようだが、私は飲み屋のお姉さんではないので、
別に若くてキレイである必要はないのだ。
片言の日本語を話す、若くてキレイなお姉さんは、スナックやカラオケで
見飽きているだろう。
ポイントは母国語でコミュニケーションが取れる若い女性であることなのだ。
翻訳も私が・・・、というからには、あまり若くて綺麗でもいけない、
と勝手に思っているのだが、あながち間違ってもいないような気がする。
駐在員さんのほとんどは中国語が話せないので、翻訳もやっています・・・と
言うと、「ほぉー、すごいねぇ」と一瞬、尊敬のまなざしを向けてくださったり
もする。
が、私の日本語は今、かなり怪しくなっており、語彙力もガタガタで、
話している内に単語が日本語と中国語と混乱してきて、有用、というつもりが
「ようよん」と言ってみたり、正しく美しいビジネス口語が出てこない。
日本語と似ている発音のものは、特に混同しやすいのだ。
ついうっかり、「あの、こんな日本語ありましたっけ?」とマヌケな事を
聞いてしまったりすると、先ほどの尊敬のまなざしは瞬時に「本当に翻訳者?」
といった、不安と懐疑の入り混じったまなざしに変わる。
翻訳もしている知的な?日本人女性を演じるつもりが、
中国語を話すエセ日本人になっているらしい。
http://homepage3.nifty.com/kamakurakoka/