なぜ中国へ? 後編 

もうすぐ3年経つが、「いつ完全帰国するか」は、ずっと保留になっている。この3年間、もう帰りたいと思ったことは数えきれないし、今でも時々ある。特に今は、北京に友人は皆無に等しいので、私の一番の敵は孤独なのだ。ボス夫婦は「週末、ヒマなら遊びに来い」と誘ってくれ、私も二人が好きだし、とても楽しいが、ボスはあくまでボスであって、友達ではないのだ。
帰りたいと思った時にいつも私を押し止めるのは、「この歳じゃ、手ぶらじゃ帰れない」といった、背水の陣的な思いなのだ。私は地方(田舎)出身なので、地元の求人は、年齢制限の設定がかなり低く、友人は三十路の女性の就職はホントに厳しいよ・・・と口を揃えて言っている。手ぶらじゃ帰れないし、中途半端で帰って、仕事が見つからなかったら、前職を辞めてまで留学したことが無駄になっちゃうかも・・・と、考えただけでも恐ろしい。じゃ、もう少し粘って中国語を上達させよう・・・と考え直すパターンである。
日本ではあまり知られていないが、中国で最も一般的な中国語の検定試験として、通称HSK漢語水平考試)というのがある。一応、留学生の中国語レベルを計る目安となっているので、殆どの留学生がこれを受けて帰国するので、言うなれば留学の集大成のような試験である。HSKは1級から11級まで区分されており、英語で言うTOEFLのようなもの。1〜2級が基礎、3〜5が初級、6〜8が中級、9〜11が高級となっている。履歴書に書いて通用するのは6級以上だというが、一年で8級を取る人もいれば、2年で3級止まり、というツワモノもいて、バラツキがあり、留学期間が長いからといって、一概に中国語能力が高いとは限らない。
とは言うものの、HSKは6級より8級が欲しいし、どうせなら8級より高級、と、欲も出てくるし、高級を取ったら取ったで、実務経験が欲しくなる。しかし、この先、何十年いても、ネイティブにはなれないのだから、語学は自分で区切りをつけない限り、キリがないのだ、と最近とみに思う。
確かに、私もいつまでも中国にいる訳にいかないのだ。留学経験者の友人には、”帰り時ってものがあって、それを逃すと、帰るに帰れなくなるものよ”と、会うたびに言われる。全く、その通りかもしれない、とも思う。こうしてる間にどんどん歳を取るし、ある程度の実務経験も欲しい。経験と年齢の兼ね合いで、時期を見て撤収しよう、と思っているのだが、恐らく、お腹いっぱいに”人生を先取り”した時が、私の帰り時なのだと思う。
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