9月13日(金)〜14日(土) 梅里雪山の懐へ―徳欽一泊小旅行

梅里雪山を間近に臨む"観景台"の仏塔を通り過ぎると、
車はいく度もカーブを描きながらしだいに崖下の谷に向かって下りて行きます。
V字型に深く切れ込んだ谷底にはメコン河の源流瀾滄江がうねり、
上を見上げればカワ・カルポ峰がはるかに高く聳えるという壮大な景観。
この瀾滄江大峡谷には欄干が一部崩れ落ちた橋がかかっており、
これを渡りきったところで道は二手に分かれます。
右手にとれば明永氷河のある明永村です。
崩れ落ちたらしい土砂が盛り上がっていっそう狭くなった道は
ハンドルを切り損ねればそのまま瀾滄江にまっさかさまという危険な場所、
そこを通り抜けて雪解け水の渓流沿いにしばらく走ると、
やがて右手に静かな村の風景が広がります。
ところが目的の明永氷河入り口を前にしてとんでもない足止めを食らってしまいました。
対向車のジープがエンコしたまま道を塞いでしまって通れないのです。
そうこうするうちにいつのまにか後続の車が数珠繋ぎに…。
みな後ろの方から様子を見に来て、結局、タシさんはじめ十人ほどで
このジープを後ろから押して端に寄せ、なんとか通り抜けたものの、
明永氷河入口の管理事務所に着いた時はすでに6時半過ぎ。
氷河まで上る馬もすでに一頭もおらず、管理事務所も閉まったあとでした。

すでに山の端に落ちかけている太陽の残光がほんの一瞬、氷河の氷をきらきらと
輝かせました。
本来なら氷河のすぐ近くまで馬で一時間半近くかけて上れるのですが、
一泊二日という限られた時間ではあれもこれも欲張るのは無理というもの、
それに遠くから眺めてこそ美しいということもあります。
このお天気、この時間帯というまれな条件に恵まれてすばらしい光景を目に
できたのですから、それで十分とするべきでしょう。
陳さんは残念そうでしたが、明朝の朝焼けを見ることに全員意見一致して、
苦労して来た道をまた引き返すことにしました。
ところで今晩はどこに泊まるのでしょうか?

 「ちょっと設備は悪いけど"観景台"の民宿はどうかな?
お山はあそこから見るに限るよ!」
とタシさん。

"設備が悪い"というのがなんとなくひっかかりますが、乗りかかった舟、
ここはどうでも向こう岸まで行かなくては。

帰路を急ぐ車中からふと見上げると、カワ・カルポから後光が射しているでは
ありませんか!山向こうに落ちた太陽の光とわずかに残った雲がこの世のものとも
思えないえもいわれぬ奇跡の光景をつくり出したのでした。

谷を上がり崖沿いのカーブに差し掛かる頃には、太子十三峰の暗藍色のシルエットが
薄暮に融け込んで、左右に腕を広げたように流れ下る氷河だけがカワ・カルポに
掛けられた純白のカタのように浮かび上がっています。
(2003年のメルマガで掲載)
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