ある営業さん

2003年のメルマガに書いたものです

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格安航空券のことについて皆さんはどのくらいご存知でしょうか。
私もこの世界に来るまではまったく知りませんでした。弊社が販売代理している
格安航空券は旅行会社で発券されます。それをわれわれのような代理店に卸す商売
が存在します。その卸の旅行会社(わかりやすく以下問屋さんとします。
もちろんホールセラーと言えば商売している人なら分かるでしょうが)は特定の
航空会社の座席を一定数代理店相手にさばく仕組み(単純化して言えば)。
代理店の側は販売したい航空会社を扱っている問屋さんと付き合う必要があるので、
私も開業時はあちこち挨拶周りをしています。ほとんど前の会社からですので、
すんなり取引開始できますが、取引条件の面から新規開拓する必要もあります。
この世界は薄利多売の業態なのと、弊社自身小さな小さな代理店にすぎないため
一部の問屋さん以外は濃いつきあいはありません。
弊社は横浜駅から若干離れていますから来社された問屋さんは少なく、5社だけで
す。
しかもそのうちの2社は駅まで迎えに行って外で商談したので、実際は3社だけ。
仕入れも私自身が出向いてますので、商談は問屋さんでできるのです。
で、ある航空会社の小売価格がどうも競合に比べて不利なので、新しくある問屋さ
んに連絡して取引開始を打診しました。その問屋の営業さんはわざわざ弊社まで
足を運んで取引を始めてくれました。
その営業さんはその後も1回来社されました。2回来社してくれたのはその方だけ
です。取引が少ないのにわざわざ来ていただいて申し訳ないという思っていました。
そこはある日系の航空会社の扱いが多く、弊社はどうしても中国系航空会社(と
別の日系会社)の扱いが多くなる趨勢で、そこの問屋さんとは取引はそれほど
増えていないのですが、急なキャンセルや面倒な取引も快く対処してくれるなど、
とてもお世話になりました。
その営業さんは1年前から体調を崩して入院、数ヶ月前に1度復帰したもののまた
再入院。そして先週、残念ながら帰らぬ人となってしまいました。
聞けば私より1年若い方だったとのこと。モラルも高く、非常に惜しい方でした。
一度復帰したときに電話で話しをしたのですが、「齋藤さんのところは朝起きたら
すぐ仕事ですよね、休みの日もメールとか気になりますよね、そのスタイル考え直
さないと病気になりますよ」と言われました。
もちろん自戒を込めてだったのでしょうが、いまとなっては、私にとっても終生
忘れられない一言となってしまいました。
後から聞いた話ではご家族だけが病状をご存知で本人には知らされなかったそう
です。電話の声は比較的さばさばした感じで、ご自分の病状を悟っていたかどうか
は私にはわかりません。
お昼でも食べながら続きは話しましょう、ともおっしゃてくださったのですが、
ついにかないませんでした。 合掌。

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最初はむかしばなしに分類しましたが訂正しました
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