丹東通信
(Kさんの2002年ごろの投稿です）
昨日サッチモのＣＤなどを買った。
What A Wonderful World.や、お気に入りのセシボンなどが入っている。
他にはケニーロジャースやＢ．Ｂ．ＫＩＮＧなどの渋いとこと、
ちょっと若手ではライオネルリッチーとロッドスチュワート、おもいきりなつかしい
ダイアナロスもあった。
一枚平均7元105円である。これで驚いちゃあいけない。映画のＶＣＤ、ＤＶＤも
大体同じような価格帯である。
千と千尋など一連の宮崎アニメ、「七人の侍」や「生きる」など黒澤作品の多くも
持っている。三船敏郎がすごく若い｢白痴｣まである。
全部海賊版である。私は好き好んで海賊版を買っているのではない、ここで売って
いるのは全部海賊版。海賊版しかないのである。
コンピュータのソフトにいたっては中国語だが殆どなんでもありありで、一枚4元
60円が相場である。
映画関係にはしかし注意が必要である。
こないだ買った｢レニングラード大攻撃戦｣は全4巻からなる大スペクタルであった。
ソ連軍を動員して作ったらしいのだが海賊の仕入先が日本らしく、カバーが日本語
そのままである、こういうのは必ず字幕も日本語のままだ。
海賊だからわざわざカバーまで中国用にデザインすることは無く、
中身に中文字幕をつけるのが関の山だ。中にはカバーの解説欄にでたらめにひらが
なを並べただけのものがある。
日本製＝いい製品と言うイメージの売り込み方で、いろんな製品にでたらめな日本
語を見ることができる。
レニングラード戦が、いざ始まると、ロシア語の映像、日本語字幕は下に中文
字幕が上にあり、見づらい画面だが戦争スペクタクルになれば関係ない。
迫力ある戦闘シーンの連続である。
しかしだ、いよいよ最後の第4枚目をかけたとき。
あれっこれって昨日見たよ。
取り出してみると、ＣＤの上にはＶｏｌ．４とプリントされているが、
中身はＶｏｌ．３なのである。
これは全中国に一体何十万枚出回っていることであろう。
そして誰も文句を言わず、事件にもならず埋もれていくのだ。
途中で終わってしまったストーリーもある。
グラディエーターとブレイブハートは 国英双語と表のラベルに書いてあるにも
かかわらず、中国語の吹き替えしかない。
この恐ろしくミスマッチに腹を立て、この時はＣＤ屋に文句を言いに行った。
すると、なんと裏には国語配音(中国語)と書いてある。
「お客さん、もっと注意しなけりゃあ・・・」
みたいなことを言われ、取り合ってもくれない。
ここでも又すごすごと帰るしかなかった。こうやって皆我慢強くなっていくのだ。
めいふぁーず(仕方がない)
フーテンの寅さんを見つけたときは嬉しかった。
早速ホテルに帰ってわしのＤＶＤプレーヤ、これは日本へ帰るときは会社に預けて
おく、にいそいそとかけてみる。「イヤッホー」思わず歓声まで上がる。
だが、始まってみると、愕然とした。
トラが中国語をしゃべっているではないか。
しかもただの吹き替えならともかく、よくぞこれだけ似た声の中国人を探してきた
もんだと感心させるくらいよく似ていた。
言い回しもどこか葛飾柴又流である。
ついでにこのプロデューサーは他の声優にもこだわったらしい。
おいちゃん、さくら、隣のタコ社長まで本物をほうふつとさせる出来栄えである。
これには笑えた。
そしてなんとなくストーリーも分り、最後まで見てしまった。
物語が終わった後の画面を見ているとある事が分った。
これは中国で放映されたテレビのパクリであったのだ。
全く、海賊は何でもパクルのである。
ニューヨークのビデオレンタルショップも似たような事をやっている。
日本で放映されたテレビ番組のシリーズをビデオでレンタルしている。
そのため、コマーシャルにはそれを録画した地方の思い切りローカルな宣伝が
そのまま入っている。
最近、実は掘り出し物があった。往年のロシアの名作映画「戦争と平和」である。
主演監督セルゲイボンダルチェク、女優はリュドミラサベリーエワなのである
(今でも言える)。
大当たり、ロシア語に日本語の字幕がついている。これで38元570円であった。
高校生だった頃、この映画の映画館に夏休みでもあったので一週間ほど通った事
がある。
そんなに感激したわけではなく、くぐもったようなロシア語と高校生にはあまり
面白くないストーリーのせいで何時も途中で寝てしまったのだ。
体が痛くなったのとお腹がすいたので帰るが、その夜寝られないので翌日また
映画館で寝てしまう、そんな事を繰り返した。
トルストイの大作を読破しないで、映画の大作を見て読んだ事にしてしまおう
との企みは結局うまくいかなかった。
だが絢爛豪華な舞踏会や大規模な戦闘シーンは今見ても圧巻である。
丹東の海賊映画に慰めてもらう日々なのです。
