いよいよ氷灯

ハルピンの冬は、街の至る所に氷灯や氷の彫刻があって、街中が氷灯
祭だともいえるのだが、いちばんの見所は、今年で30回目を迎える
兆麟公園の氷灯遊園会だろう。1963年に始まったこの祭りは、世
界的にも有名で、我々の今回の最大の目的でもある。兆麟公園へは中
央大街からも歩いてすぐだ。

本来は、氷灯はライトアップされた夜に見るべき物だ。しかし、待ち
きれない我々は昼間、散歩のついでに、ちょっとのぞいて見た。兆麟
公園の入場券は5時半以前と以降に分けられていて、昼間は夜の半額
だ。それでも、わざわざ昼間見に来る人はほとんどいなかった。

人気のないひっそりした公園の中に巨大な氷の彫刻やら、建造物やら
があって、その氷の中に電灯が入っているだけ、しかも、ところどこ
ろ埃が積もっていて・・・。やはり、昼間に見るべきではなかった、とい
うのが正直な感想だ。

氷といえば、我々の感覚では溶けやすいもので表面が湿っている。だ
が、ハルピンの冬の気温では氷は溶けることがないので、表面が乾い
ている。まるで透明なプラスティックのようだ。触ると冷たいので確
かに氷なのだが、手で擦ったぐらいでは氷は溶けず、手が冷たくなる
だけ。この溶けない氷にこそ利用価値があるのだ。

もともと、氷灯というのは、見て楽しむために作られた訳ではなく、
松花江沿岸の漁民が冬場の夜に仕事をするための照明器具として、生
活の知恵が生み出したものだそうだ。

作り方はいたって簡単で、氷は外側から凍るという性質を生かしてい
る。容器の中に水を張って放置しておき、途中まで凍った所で外を暖
めて氷を容器から外す、すると中ががらんどうのランプシェードにな
るというだけの方法だ。そして、春節に灯篭を買えない貧しい人達が、
氷灯をその代用品として新年を迎えるようになって広まって行ったそ
うだ。

今や公園の中にそびえたっている巨大な氷灯からは、そんな慎ましや
かな昔の生活を偲ぶすべもないのだが…。

                      (つづく)

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