寧夏・内蒙古 編

百零八塔

ひとつ目は、銀川から60?ほど南にある青銅峡の百零八塔(108塔)。
百零八塔は、黄河の西岸に作られた108基の仏塔であるが、塔の配置が
ユニークで、対岸から眺めるとまるで雛壇にのっているかのようである。
一番上の段には1基の塔、その下の2段が3基、そして順次に、5基・5
基・7基・9基…と、1基2〜3メートルほどの塔が下にいくほど広がっ
た三角の形に配列されている。ただ、これらのユニークな塔がいつ作られ
たかは謎らしく、遅くとも、元朝の頃だということだ。

銀川から百零八塔に行くには、まず、興慶区の南門広場近くのバス停から、
青銅峡市の中心部である「小ハ(土偏に貝)」行きのバスにのる(約1時
間半)。小ハのバス駅に着く少し手前の広場でバスを降り、「青鎮」行き
に乗り換える。百零八塔は、終点ではないので、行きたい旨を伝えておく
と、4〜50分ほどの所にある発電所の近くで降ろしてくれた。さらに歩
くこと15分ほどで旅遊区に到着。ただし、着くのは黄河の東岸、つまり
対岸だ。
我々は、まず対岸から塔を眺めようと、黄河沿いに遊歩道を歩いてみた。
10分ほどで百零八塔の真正面に着く。ここは、もともと青銅峡と呼ばれ
黄河の川幅が狭まった所だった。しかし、ダムが出来たおかげで川幅が広
がり、優に100メートルはあるだろう。両岸は峡谷の名残を残し、傾斜
のきつい山の斜面である。108基の塔は、黄河の黄色と同じ色をした剥
き出しの斜面に、三角形に整然と並んでいる。
入場券を買うのは、東岸の旅遊区の入り口で、そこから川を渡って塔まで
行くには、船に乗ることになる。船乗り場の料金表を見ると、快速艇(2
0元/1人)。往復の料金で、普通は皆これを利用しているようである。
ただし、その下の段に、漂流器(50元/1)と書いてある。はて、漂流
器?と疑問に思ったが、この謎は後ほど解明することになる。

我々は当然ながら快速艇で西岸に行き、百零八塔とその横の展示室を心行
くまで楽しんだのち、帰りのボートに乗り込んだ。遠くの方からなにやら
騒がしい声が聞こえる。最初はボートのエンジン音に掻き消されてあまり
気にならなかったのだが、ボートが川幅の中程まで来た頃、騒ぎの主をは
っきり確認した。
河の下流側に大型の黄色いゴムボートが見え、その上で5〜6人の学生っ
ぽい若者がこちらに向かって叫びながら手にしたオールを振っている。子
供でもあるまいにゴムボートくらいでそんなにはしゃいで…と思いつつも
よくよく眺めると、彼らの形相が案外必死なのである。ようやく目の前で
起きている事態と漂流器の意味が飲み込めてきた。
どうやら一団の若者たちは、節約のために1台50元の漂流器(ゴムボー
ト)を借りて対岸を目指した、が、ダム湖とはいえそれなりに流れがあり
漕ぎ疲れて快速艇に助けを求めている、というのが真相のようだ。無情に
も船頭さんは、救いの手を差し伸べることはなかったが、まぁ見た感じ大
事には到らなさそうだった。その後どうなったかは知らないが、借りる方
も借りる方だが、貸し出す方も貸し出す方だ。ただ、漂流器の名が妙に的
を得ていて笑えてしまった。


                       (つづく)
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