帰国後奮闘編

ある某メーカーの視察兼会食の通訳に行った時の話だが、
日本人6人、中国人5人で対面式での会食だった。
スケジュールは午前中はプレゼンで、会食をはさみ、午後は工場見学。
通常、通訳で行く際には、昼食の時間は休みと見なされ、
通訳業務の時間外として、この分の請求はしていない。
だが、この日は日本サイド6人、中国サイド5人で対面式の
”会食会”だったので、食事中もず??っと会話が続いていく。

このまま引き続き午後も仕事やねん! 少しは食べさせてよ???と
思ったが、
会話が切れると間髪入れずに別の人が話を始めるのだ。
うううぅぅ、オナカすいた・・・、これって密かに嫌がらせ???
とまで思うほど、
ありえないくらい延々と会話は続き、時間はどんどん過ぎていく。

話を聞きながらパクつくのは、さすがに失礼なので、話が切れた際に
パクっと口に入れて、ささっっと食べるしかないのだ。
私は”隙あらば食べるぞ!”とばかりに、
常にお箸を持った体勢で通訳していたが、
それもむなしく、全く食事ができないまま、会食は進んでいった。
お箸をず?っと握りしめており、「食べる気満々!!」を
アピールしまくったつもりなのだが、
全然、食べる時間が与えられない。

しばらくして私の目の前に座っている女性が見るに見かねて、
中国語で同行者たちに、
「あんたたち、少し話すのやめて。通訳さんが全然ご飯を食べられないわ」
と、制してくれ、
「どうぞ、ゆっくり食事してね!」と言ってくれたのだが、
彼女が私に対して言った台詞を、
しかも「通訳さんが食事できないからしゃべるな!」といった
内容を日本サイドに直接通訳するのも、ウソっぽい?あてつけみたい?
嫌味に聞こえちゃう?とか色々考えてしまい、日本サイドに言わずにいたら、
日本人的な「場を察する」「空気を読む」で、
「ヤバイっっ、会話が途切れた!何か話さなきゃ!!」
と思ったのか、
次から次へと話題を振り続け、
結局のところ、豪華幕の内弁当を目の前にして、
白米を2口食べ、最後にお茶を飲むのがやっとだった。

クライアントの中には高いお金を支払って通訳を呼んでいるんだから、
フル活用しないと損!と考える人がいるので、
通訳を黙らせておくのはもったいない、と思うようだ。
ただ、ここまで食事をする時間すら与えられなかったことは、
後にも先にもこの時だけである。
通訳は基本的に、人の倍しゃべっていることになり、
脳細胞が活発に活動するせいか、
普段よりもエネルギーを消費するらしく、
通訳の際には、やたらとオナカが空く(ような気がする)。
しかも、私は空腹と寒さにめっぽう弱く、
オナカが空くと暴れる!と言われるくらい、
空腹時にはイライラしまくるタイプなのだ。
午前も午後も、絶えず話をしている私に、
せめて食事くらいまともに与えてくれ!!!と
思ったが、そこは我慢するしかない。
その日の午後は、ひたすら空腹との戦いで、
夕方にはメマイがしてきた。
それ以降、そこの仕事には、
ちょっとした非常食をしのばせて行くことにしている。
備えあれば、憂いなし!なのだ。

先日、英語の通訳さんと一緒になる機会があり、そんな話になったとき、
「私は食事をさせてくださいって言うわよ?!」とおっしゃっていたので、
ちょっと驚いた。
「だって食事をちゃんと取らないと、午後のパフォーマンスが悪くなって、
きちんとした通訳ができないでしょ。
お互いのためにも、食事は大切よ?。」とのこと。
人によっては、「契約時間外ですので・・・」
と会食を断る人もいるそうだ。
確かに食事をきちんととらないと、集中力が続かず、
パフォーマンスが悪くなるが、
私はまだまだヒヨっ子なので、まだそこまで言えないなぁ。。。と思う。

ちょっと脱線したが、そのようにロクに食事もさせてもらえないかも
しれない仕事を、報酬なしのボランティアならともかく、
お金を払ってまで行く気には、さすがになれない。

まぁ、もちろん、正規の仕事の延長線上に、
ボランティア的なことが付随することは多々ある。
例えば2週間の通訳期間の間、
仕事が終わった後に中国人の買い物に付き合う、とか、
ホテルまで送っていったり、食事に連れて行く、
週末に観光などで出かける際のアテンド通訳、
歓送迎会に参加するなど、
この手のことは全て無報酬であるが、
可能な限り付き合うようにしている。

他に、通訳業務の延長で、自分で会費を払って、
忘年会や新年会に参加したり、
資料などの翻訳を頼まれ、自宅で夜なべすることもある。
だが、それは、”海老で鯛を釣る”、というか、
仕事を円滑に進めるために、必要なものだとも思うし、
そうやって先方に恩を売る?ことも大切なのだ。
それに、中国に行ったばかりの頃、中国語力ゼロで留学した私は、
コミュニケーションがとれずに本当??に苦労したので、
言葉が通じないことが、どれだけ不安で大変なことか身にしみている。
だから、言葉が通じないのに、たった一人で忘年会などに招待されても、
苦痛以外の何者でもないだろうなぁ。。。と思うし、
週末にどこかに観光に連れて行ってもらっても、通訳がいなければ、
どこに行って、何を食べ、何を見たのか、
なんだか良く分からない一日になるのが明白なだけに、
やっぱりむげに断るのは心苦しいので、仕事の延長として、
割り切って可能な限り引き受けることにしている。
通訳の仕事は語学力ももちろん必要だが、
良い人間関係を築くことがより大切なのだ。
いかにクライアントや来日した中国人と、
信頼関係を築くことができるか、
彼らの満足感を得るか、が非常????に大切である。
「お金にならないから」と、
仕事以外のボランティア的な部分を断っているうちに、
「センベンさんはあてにならない」とならないとも限らない。

研修生が日本にいる時には、
個人的に食事につれていってご馳走したり、
買い物に付き合ったりと、相応の出費が伴うが、
これは100%自腹である。
しかし一旦、信頼関係を築くと、「次もセンベンさんに」と、
中国サイドからも指名してくれるようになるので、
鯛を釣る為には、ある程度の投資も必要だと思う。
やっぱり通訳の仕事は、中国人あっての仕事なので、
彼らに、できるだけ快適に日本で過ごしてもらえるように心がけている。
私の話す中国語は、
中国人にとっては、「外国人が話す中国語」なので、
聞き取りづらかったり、理解しづらかったりすると思う。
その自覚が十分にあるだけに、
通訳が「日本人であることのメリット」を感じてもらうためにも、
「時間外のサービス」を提供しているのかもしれない

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