青海省編

チャカへ ^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^

 翌朝、「10時頃に西へ向かうバスが通る」と聞いていたので、
羊肉湯と花巻の遅い朝食を食べた後、招待所の前でバスを待つ。
しばらくして、Tシャツ姿の若者が近づいてきて、「どこに行くの?
ゴルムド?」と聞く。
我々が「チャカまで」と答えると、若者は再び「それはゴルムドま
での途中か?」と聞く。
そして、隣の招待所の前に駐車してある新車の中型バスを指差しな
がら「乗ってかないか?」という。
バスには、運転手と助手しか乗っていない。どうやら新車のバスを
運んでいる途中らしい。
我々にとっても、これはラッキーである。
さっそく値段交渉に入ったのだが、双方とも151からチャカまでのバ
ス代の相場がわからない。

 ぼったくる気もないらしく、「じゃあ誰かに聞いてみよう」という
ことになり、目の前にあった診療所に駆け込んだ。
果たして診療所の中には医師と数人の患者がいたが、誰も正確な値段
がわからない。
下は5?6元、上は35元までみな思い思いに適当な値段を口にする。
結局、中を採って1人20元ということで交渉成立。
その後、地図で見ると151からチャカまでは150キロ以上あったので、
20元ではやや安いかなという感じだが、まぁいい線だ。

 ぴかぴかの新車バスに乗り込んで彼らと話しているうちに事情が
飲み込めてきた。
彼らは蘭州で自分達の単位(会社)で使うバスを買って、それをラ
サまで運んでいる途中だったのだ。
昨夜は151の招待所で泊まり、今日の目的地はゴルムド。
その翌日にはラサまで行くのだと言う。
そして、バスを空で走らせるのももったいないから、道中、小遣い
稼ぎに客を拾おうとしたわけだ。
思惑通りゴルムドまで行く客ではなかったが、彼らにとっては客を
見つけることができたし、また、我々にとっても清潔で広々とした
交通手段を得ることができた。

バスは黒馬河を過ぎたところから青海湖を離れ、
青海湖西側にそびえる山に向かって谷間の道を登っていく。

斜面は急だが基本的に周囲は緑の牧草地、
チベット族のテントが遠くに点在する。

日本人的には、山中のドライブというと森林と連続するS字カーブを
連想するが、ここの景色はそれとはかけ離れている。

木がないのである。

視界を遮る物がないので、山の斜面全体を覆う草原の緑は、
波打ったように遠くまで続き、はるかかなたの羊はゴマのように
小さく見える。
 
バスが山頂まで来た時、オボが見えた。
振り返ると谷の間から青海湖が青く輝いている。
周りにはチベット族のテントがいくつかある。

道端に「橡皮山3817m」の標識が建っていた。
遊牧民のテントが道路からこんなに近いところにあるのも珍しい。
景色は申し分なく美しい上に、
チベット族の生活をのぞかせてもらうには
絶好の場所だ。
観光地でもなんでもないただの峠ではあるが、
「帰り道にここでバスを降りよう」
と直感的に思った。
 
橡皮山を越えてしばらく走ると、
傾斜のなだらかな高原の景色に変わった。
しかし、青海湖周辺で見たような上質の牧草地ではなく、
ところどころに雑草が生えているだけの荒れた大地である。
そんなところにも放牧されている家畜がいる。

駱駝だ。

硬くてまずそうな草を食んでいる駱駝を見ながら、
改めてこの道が国道109号線であると同時に、
古の「シルクロード南路」であることを思い出した。
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