しごとの日常編

しかし、なんせ超特急なだけに時間的にタイトで、
納期はその日の夕方4時、あと2時間しかない。
仕方がないから、二人で協力してネイティブチェック?をすることになった。
オージーのボスが、英語の訳文を手に、私が日本語の原稿を手に、
作業を開始。
私が日本語の原稿を元に、中国語で意味を伝えながら、
ボスが、英語の訳文を追う。

時々ボスが、「それは、こういう意味でいいのか?」と、聞いてくる。
「うん、間違っていないけど、ちょっと違うんだよね・・・」と、説明。
何といっても微妙なニュアンスが難しいうえ、二人とも、
中国語は”外国語”なのだ。

そして日本語独特の、持って回った言い回しが、上手く通じない。
「結局、何が言いたいんだ?」と聞かれても、言いたいのはこれなんだけど、
本文では直接、言ってないんだよ、だーかーらー・・・と説明すると、
「じゃ、どうしたら良いんだ?訳がわからない・・・」と、困惑されてしまう。

そんな中でも一番タチの悪いのは、微妙に本来の意味から外れた意味で
使われている外来語たちである。

そんなふうに四苦八苦しながらも、なんとかネイティブチェック?が終了した。
これが本当に”ネイティブチェック”になったのかどうか、
大きな疑問が残る作業であったが、
「意味が合っていて、文法の間違いがなければ成功だよ!」と、
さすがオージー、アバウト且つ楽観的である。

一抹の不安は残るが、こんなネイティブチェックもアリなのだろう、たぶん。

これはパワーポイントで作成してあったので容量が大きく、
メールで納品できないため、CD-Rに落として納品に行くことになった。
イムリミットが迫っているので、バイク便でも間に合わないのだ。
ボスは、「センベン、行ってくれないか?」と言ってはみたものの、
私のカジュアルな服装とスッピンの顔をみて、
「やっぱり自分で行こう」と考えなおしたようだ。
自慢ではないが、私は普段、外出する予定がないときは、
とても取引先に出入りできないような体裁である。
不意の外出時は、タクシーで一旦自宅に戻って(所要10分)、
身支度を整えてから行くことにしているのだ。
しかし、この日はそんな時間的な余裕すらなかったので、
ボスが自ら、日系企業へお使いに行ってくれることになった。
しかし、彼は日本語はほとんど喋れないため、
「4時に届けに行くって電話で連絡してくれ、”Hello! Byebye!!”って
これだけ渡して帰ってくるよ」と明るく言って出かけていった。

ボス、ごめんね、こんな時のための日本人スタッフなのに
役立たずで・・・・と、思うが、下手に私が行って、内容などを
細かく聞かれるよりも、日本語がわからないボスが行って、
「Hello〜! Byebye!!」と、渡して帰って来たほうが良いに違いない、と
思わなくもない。

この思惑は大成功だったようで、納品してから半月経つが、
この件については、まだクレームは来ていない。
どうやら、半分ずつのネイティブチェックは問題なかったようだ。


                    (しごとの日常編つづく)

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